光学設計ノーツ6.ホログラフィと正弦波振幅格子
前回と同様に今回も、回折光学素子(DOE)を理解する上での基本としてホログラムを考える。
今回はそのホログラムにシンプルではあるが具体的な形として正弦波形状を与えて考えてみよう。
回折格子や、複素電場を考える場合に有用な平面波角度スペクトル表示法の理解にも繋がる。
1. 正弦波振幅格子…
光学設計ノーツ6.ホログラフィと正弦波振幅格子 全文を読む
株式会社タイコ 牛山善太
pp-admin
光学技術の変遷
光交流会第232回 20周年記念フォーラム
第四部 演題 「光学技術の変遷」
講師: 辻内 順平 先生 東京工業大学名誉教授
日本の光学技術の基礎を作られ方として著名であり、また光交流会アドバイザーとして長年に渡り光交流会の活動をご指導いただいております辻内 順平先生に「光学技術の変遷」のタイトルで講演いただきました。
先生の長年に渡る光学技術分野のご活躍の中から抜粋いただいた講演は物理学に於ける最古・最重要な位置を占めていた古典光学世代から第二次世界大戦以後のエレクトロニクスの進歩を前提としてレーザーの出現、精密加工技術の発展を踏まえた光学技術の第一世代、コンピューター技術の導入による第二世代、そして革命的発想の導入による第三世代と過去から未来技術までを網羅した圧倒的な内容でした。
特に第三世代(2)に於けるディジタルカメラに於ける撮像素子、Low Pass Filter、画像処理技術に関するお考えや 近接場光学、回折理論による分解能の制限、Evanescent波の検出、光学現象のSimulationなど また第三世代(3)では新しいレーザー加工、高度通信技術、回折光学技術など多岐に渡り貴重な講演いただきました。
また 日本のみならず世界の光学関連学会の動向と現状を短い時間内に紹介され、これらの多大な内容を纏められた辻内先生の講演には大いに驚かされました。改めて会員一同感謝申し上げます。
その後、行われました光交流会創立20周年記念パーティには多くの会員と共に当会のサポーターの先生方を始め多く方々にご参加いただき、多くの方々より貴重なお言葉をいただきました。
紙面の関係で一部の方々しか記載できませんが 日本光学会幹事長谷田貝先生、東京農工大学教授大谷先生、千葉大名誉教授本田先生、一色先生、三縞先生、鶴田先生、牛山先生、井上先生、小柳先生 写真工業市川さん(順不同)他、大勢の方々にご参加いただき会員との交流が大いに盛り上がりました。感謝申し上げます。
文:関 英夫
光学薄膜の使われ方
光交流会第232回 20周年記念フォーラム
第三部 演題「光学薄膜の使われ方」
講師:鬼崎康成氏 東海光学(株) 薄膜事業部 事業部長 当会会員
光交流会 会員を代表して東海光学 薄膜事業部 事業部長 鬼崎様より「光学薄膜の使われ方」に付いて講演戴きました。
いろいろな光学機器や部品に使われ、常に脇役的存在で普段ほとんど注目されてない光学薄膜にスポットライトを当て、どのような機器にどの様な目的で使われているかをご紹介戴きました。
ご列席戴きました数々の高名な先生の前で、また大御所 辻内順平先生の直前の講演と言う事で、ご本人から「恐れ多い」との発言も賜りましたが、「耳を澄ませてごらん 光の織りなすメロディーがきっと貴方にも聞こえるでしょう♪」とユーモアたっぷりに始まり、終始会場の関心を集めていました。
光学薄膜の基礎から実際のアプリケーションまで、ご講演の内容は幅広く・わかり易く具体的で、会員及び参加者にとって大変参考になるものでした。
また、愛知万博への展示など自社の紹介も忘れずに盛り込まれておりました。
文:蜂須賀 政幸
農業分野における光技術の応用
光交流会第232回 20周年記念フォーラム
第二部 演題「農業分野における光技術の応用」
講師:岩井万祐子氏 光産業創成大学院大学院生、(株)ホト・アグリ 代表
具体的にはLEDを用いた植物栽培についての報告でした。浜松市内に実験農場を構え試行錯誤の毎日のようでした。その成果の一部なのでしょう、サラダ用の野菜を出荷したところ大変な好評をもってまたたくまに売り切ってしまったという報告には思わず拍手を送りたくなりました。ビジネスとしての見通しを、少しずつでも確かなものにしていけるようこれからの努力と幸運を願わずにはいられません。なお、当日の聴講者のなかに農文協の方がいらしており、翌日に簡単な感想を送っていただきました。岩井さんの励みになればと思い、それを掲載します。
普段はあまり話題にならない世界ですが、農業の世界でも「光」は注目されており、LEDの利用も報告にあった機能性の向上だけでなく、病害虫防除、開花時期の調節、寡日照期の収量の大幅アップ、鮮度保持などでの効果が認められており、研究がされているだけでなく実際の利用も広がっております。
昨日は、特に機能性の向上への着目と、その事業化ということでしたが、それなりにおもしろく聞きしました。全面展開にはコストが問題になっているようでした。電気代は安くて済むらしいので、設備投資にかかるのだと思います。
ともあれ、ああいう若い人(その前の方も含めて)が、意欲的に取り組んでいるのはいいですね。
文:高木 貢一
起業実践による光産業創成
第232回 20周年記念フォーラム
光交流会は創立20周年を迎えたことで、昨年7月より1年間の記念の年として活動を行ってきている。6月はその最終月にあたることから光学の各界より4人の講師を招いて盛大に開催した。以下、各講師と講演内容を4回に分けレポートする。
第一部 演題「パイフォトニクス(株)~起業実践による光産業創成~」
講師:池田貴裕氏 光産業創成大学院大学 パイホトニクス株式会社 代表
学生企業家の池田氏の講演は、所属される光産業創成大学院大学についての説明から始まった。当大学は、テーマを光に絞り、その無限の可能性を糧として新たな産業を起こす事ができる人材を要請すること、つまり企業そのものが教育の第一目的として、浜松フォトニクスが中心となり創設された。
また、学則の第一条(目的)が「光産業創成大学院大学は、光と生命体、物質、情報等とのかかわりに関する学理と知見を基礎に置きつつ、光の発生、変換・制御、利用に関する最先端技術を駆使し、光の各種機能を連携・融合、さらにそれらの技術と経営の融合に関する研究開発を教授研究し、その信奥をきわめ、新産業を自ら実践しうる人材養成を行うことを目的とする」と紹介された。中でもこのユニークな大学の「仕組みと位置づけ」、理事長の晝間氏が提唱されている「ヒルマ・リング」についての説明があった。その後、池田氏ご自身の当大学に入学され、パイホトニクス㈱を起業された動機と経緯について語られた。
池田氏はホログラフィーをコア技術とされ、新開発の「定量位相顕微鏡OPMシステム」および「ホログラム用照明装置:ホロライト」現在ご研究中のテーマであると将来に向けて志しておられる豊富などが、短時間の中で多くの内容が語られ、まさに若き学生企業家のエネルギッシュな講演を聞かせていただいた。
文:吉村 泰信
5.ホログラフィの記録・再生について
光学設計ノーツ5.ホログラフィの記録・再生について
今日、所謂古典的な技術である光学設計の分野においても回折現象を積極的に利用した回折光学素子(DOE)の存在を意識し、その性質をある程度理解せざるを得ない時代になってきている。
入門的な意味でその特徴を理解するためには干渉を利用した回折光学素子としてのホログラムの記録、再生の過程を理解することは有用かと思われる。
今回はこの様な内容について触れさせていただこう。
光学設計ノーツ5.ホログラフィの記録・再生について 全文を読む
株式会社タイコ 牛山善太
4.Newton ringについて
光学設計ノーツ4.Newton ringについて
Newton ring とは現代でも、レンズ研磨工程、或いは検査においてレンズ表面の品質を簡便に、多くの用途で十分な精度で検査するために大きな役割を果たしている干渉縞のことである。
この干渉縞を検査に用いる手法は、その名の通り18世紀から実用化されている検査法であるが、堅牢な干渉測定器がレーザの生まれる遥か以前のこの時代に完成され、今日まで成果を上げ続けている事になる。
今回はこのNewton ring について考えさせていただきたい。
光学設計ノーツ4.Newton ringについて 全文を読む
株式会社タイコ 牛山善太
3.平行平面板硝子による干渉縞
光学設計ノーツ3.平行平面板硝子による干渉縞
前 回 は 硝 子 基板上の光学薄膜による反射率・透過率の変化について考えたが、今回は同じ様な薄い誘電体層により( 空気中に単独で存在すると考えるが)形成され、ある測定位置においてのみ観察可能な局在する干渉縞について考えよう。
1 . 平行薄板による干渉
図-1 に示すように空気中に置いた屈折率n 、厚さd の薄く透明な平行平面板を考えよう。
点光源からの単色光がA で入射角θで入射するとする。A において一部の光はフレネルの公式の表わす通り、反射しR1 に向かい、他の光はス
ネルの法則…
光学設計ノーツ3.平行平面板硝子による干渉縞 全文を読む
株式会社タイコ 牛山善太
2.薄い膜による干渉・光学薄膜の基礎
今回は光学薄膜を理解する上で基礎となる、任意の屈折率を持った基盤平面上の、平面により構成される薄い膜による干渉について考える。一般的には反射防止膜を基礎的に理解するために良く用いられるテーマである。
良い音を楽しむ、電気、振動、光技術の応用
第231回 光交流会オプトフォーラム
光交流会
代表幹事 関 英夫
担当幹事 高木貢一
講演会:「良い音を楽しむ、電気、振動、光技術の応用」
講 師:相島 彰徳 先生
今回はオーディオの話です。相島先生みずから会場に機材を運び込み、実際に音を聞きながらの講演となりました。音を楽しみながら専門の話を交えていく手法に、最後まで興味が尽きることはありませんでした。楽屋落ちとなりますが、フォーラム開始に先立つ試運転で最初に出た音がマイルスのマイファニーバレンタイン、これにはしびれました。どう考えてもマイルスを容れるはずのない空間で、構えて聞くというより聞こえてきたという意外性がその主たる理由だとは思いますが、同時に音質のすばらしさもその理由であったに違いありません。たまたま同じCDを持っておりますが、家で聞いてもこうまで“しびれる”ことはありません。
機材の選定にあたっては、制約上小ぶりのシステム構築となったのはやむを得ないのかと思いきや、相島先生の狙いは、むしろ良い音とは必ずしもシステムの大きさに依存しているわけではないことを示す点にあったようです。たとえば用意されたスピーカーは一升枡をふたつ重ねた程度の大きさですが、これがなんともクリアで、そしてふくらみのある豊かな音を出すのです。もちろんアンプ、プレイヤーなど他の機器の性能も関係しているのでしょうが、得られたソースの良さを裏切ることなく出力し直すのは実力あっての結果でしょう。ただしこのスピーカーセット、36万円ぐらいとのことでした。これでは気軽に音を出すわけにもいかず、かわりにため息が出るばかりです。
良い音の環境を作り出すにはさまざまな条件があるのですが、比較的見落としがちなのが振動対策ではないでしょうか。今回の機材のなかでも、アンプ、プレイヤーの足を特殊な合金(制振合金)に付け替え、またCDを上から押さえ込むように専用のディスクを重ね、さらにその上から制振合金で固定するという念の入りようです。振動対策は専門的な知識がなくともある程度は処置できそうですが、とはいえそのための費えがこれまたお安くない。単なるオモリとしかみえないものでも1個数万円とのことでした。
20代にオーディオブームを経験した団塊の世代が定年を迎え、趣味の復活としていままたオーディオが見直されつつあります。今回もその世代と見受けられる方が多かったようでした。いまのところは潜在的オーディオファンだとしても、まもなく顕在化するのではないでしょうか。事実、量販店のオーディオコーナーには相応のスペースが確保されるようになってきており、また特筆すべきはマニアの目指す方向が高級志向にあることです。ミニコンポは若者にゆずっても、本格的オーディオに関しては強烈無比の団塊パワーが控えているとあっては、これからのオーディオブームの発展は大いに期待できそうです。
そんな背景のもと、フォーラム、懇親会、ともに30名以上の出席者とその熱気に支えられ、時間の不足だけを惜しむ一日となりました。その中でも懇親会場で、グラス片手の質問攻めに大忙しの相島先生が印象的でした。