光交流会 第255回オプトフォーラム
光交流会 代表幹事 関 英夫
講 師: 明治大学理工学部 准教授 三浦 登 先生
大学の経営判断の遅れが功を奏して都市型大学としての地位を確立したお話、学生の動向など最新の大学の裏話から始まった。
一昔前は電気電子、その次は情報、でも今はこれでは学生は集められないようです。今は「バイオ・農業」の時代のようです。冒頭から若さ溢れまた軽妙な語り口の明治大学理工学部准教授 三浦登先生の話に皆引き込まれていきます。
1st(1950~)世代は、分散型(粉末)ELの時代、2nd(1968~)世代は、BELL研にてZnS蛍光体を中心としてRGB 3原色の研究が盛んになり、フルカラーブラウン管テレビになりました。この研究者達は次に液晶ディスプレイやプラズマディスプレイへ研究の軸を移していくのでした。
しかしながらこの潮流に乗り遅れた研究者達は、無機EL研究を継続し、3rd(1990~)世代に無機ELの新しい技術を生み出していくのでした。輝度、信頼性は大幅に改善され、液晶ディスプレイのバックライト、携帯電話のディスプレイ、照明にと実用化されていくのでした。輝度の比較についても表記方法が色々あり、共通の尺度で比較すると無機ELが良いと力説される先生の姿に、無機EL時代の到来を予感するのでした。
担当:須田 敏史
光交流会からの情報
「光と生体」
第254回光交流会オプトフォーラム
日の雨も上がり、いくらかの行楽気分も交えつつ向かった先は東横線「日吉」駅。今回のフォーラム会場は駅前の慶應義塾大学日吉キャンパスではなくさらに歩くこと10分の矢上キャンパスです。
富田先生には講演のほかに、「光と生体」にふさわしく、そして多くの興味が持てそうな研究室を見学できるよう配慮していただきました。
また各研究室訪問には富田研の院生の方々に案内役を務めていただき、なにからなにまで面倒をおかけすることとなりました。
こうして用意された当日のメニューは、以下のとおりです。詳しいことは記載のURLにてご確認ください。
☆ 講 演: 生命情報学科教授 富田豊先生 「光と生体」
☆ 研究室訪問
1. 岡浩太郎先生 (http://www.bpni.bio.keio.ac.jp/)
(http://www.st.keio.ac.jp/learning/1001.html)
細胞を「見える化」する技術
2. 岡田英史先生 (http://www.okd.elec.keio.ac.jp)
生体医用光工学
3. 荒井恒憲先生 (http://arai.appi.keio.ac.jp/)
レーザ医学/光医療/医用工学/レーザ工学
4. 富田豊先生 (http://www.bme.bio.keio.ac.jp)
生体計測
報告:高木 貢一
『照明のパラダイムシフト』
第253回光交流会オプトフォーラム
『照明のパラダイムシフト』
講 師 シーシーエス株式会社 技術開発本部 増村茂樹氏
第253回のオプトフォーラムは シーシーエス株式会社 技術開発本部 増村茂樹氏に講演していただきました。
照明のパラダイムシフトと題し、マシンビジョン画像処理システムにおける照明の役割人の視覚用照明との違いなど実演実験を交えながら解説いただきました。
人が「見える」ということは、目で物体を映像としてとらえている。3次元の物体が光により明るく照らされ映像情報として心の世界(潜在意識など)により理解される。機械の場合はCCDなどで映像情報を取り込むが、物体認識させるには3次元情報のみで他の情報は使うことができない。したがい3次元情報を全て入力できても画像を理解させることは極めて困難となる。人はりんごを見て意識的にりんごと判断できるが、機械にりんごの映像からりんごと認識させるには膨大なデーターがあっても困難である。
人は物体に光が当たった時の光の変化量など相互作用で物体を認識しているマシンビジョン照明は「何を・どのように」見るか、光物性の研究と同じ考え方で、光と物体の相互作用のどの部分を特徴情報として可視光を利用し抽出するか、これがマシンビジョン照明の重要なポイントになるとのことでした。
実演では照明機材を会場に持ち込み特徴情報の抽出方法を実演していただき、マシンビジョン照明の役割を明確に実証していただきました。またJIIA日本インダストリアルアメージング協会の紹介として、レンズ、カメラ、画像処理、通信、計測解析等の産業用画像分野で規格統一など照明分野での活動をお話いただきました。増村様、ご多忙のところ貴重なお話をいただきありがとうございました。
『わが社の技術・製品発表会』
第252回光交流会オプトフォーラム
『わが社の技術・製品発表会』
講 師 株式会社アタゴ 開発1部 田中政之介氏
CBCオプテックス株式会社 営業部 渡辺圭一氏
株式会社ベストメディア 商品開発部 稲畑達雄氏
今回は第22回通常総会のあとに光交流会の会員3社が約30分で自社の技術・製品の発表会を行い、その後恒例の情報交換会を行った。「わが社の技術・製品発表会」は定期的に行っているが今回はちょうど1年ぶりの開催となった。
最初に発表した株式会社アタゴ田中政之介氏は、板橋に本社をおいて国内はもちろん世界各国へと進出している自社の紹介から始まり、アナログ式・デジタル式の屈折計の原理、屈折率の特性、屈折計の利用分野等を分かりやすく丁寧に説明して頂いた。また実際に数種類の屈折計の製品を発表中に回覧して頂き、合わせてアタゴ社の製品各種を紹介して頂いた。さらにJCSS校正事業者として屈折率のトレーサビリティ体系の確立に関しての取り組みについてご紹介して頂いた。
続いてCBCオプテックス株式会社渡辺圭一氏は始めに自社紹介として、設立当初は「瓶ビールの破損防止を真空蒸着で出来ないか」ということから現在の光学薄膜事業へと発展し、現在のCBCグループに所属した経緯に至るまでを紹介して頂いた。また保有設備として蒸着装置各種、超音波洗浄機、原子間力顕微鏡等のご紹介。また主力商品の誘電体多層膜コーティング等各種製品の特徴のご説明やご紹介。さらに樹脂製品への光学コーティング等の開発案件のご紹介と多くのことを丁寧に発表して頂いた。
最後に株式会社ベストメディア稲畑達雄氏は、元カメラメーカーでカメラの設計をされていたという自己紹介の後、昨年5月より自社で発売した照明光学系シミュレーションソフトで「私の人生でもある」とおっしゃる「照明Simulator」をメインにご紹介して頂いた。従来の外国製ソフトの煩雑な入力の不満を解消すべく、取り扱いに優れしかも精度の高い純国産ソフトを目指し見事にそれを販売にまで実現し、実際にデモンストレーションを行い操作性に優れたソフトであることが聴講者一同納得出来た。
今回は、光交流会という異業種交流会ならではの各分野からのキャスティングとなり、大変有意義な発表会となった。発表会の終了後の情報交換会においても、大変盛り上がり、2時間がとても短く感じられた。
懇親会は、元ゼンザブロニカ工業の進藤忠男氏の乾杯に始まり、最後は今回のオプトフォーラムにて光交流会の幹事を退任することになった吉村泰信氏と荒川健一氏に対し長年に渡る功績を称えて会を終了した。
報告:島 正知
「ブロニカ草創期を語る~カメラ開発秘話」
第251回光交流会オプトフォーラム
「ブロニカ草創期を語る~カメラ開発秘話」
講師:元ゼンザブロニカ工業(株)取締役事業部長 進藤忠男様
代表幹事 関 英夫
担当幹事 朝倉 耕治
年も明け、新たな気持ちで臨んだ251回目のフォーラムを報告いたします。
講師の進藤様は1928年生まれで昨年81歳を迎えましたが、とてもそんなお年には見えませんでした。外見もそうですが、ぜひとも強調したいのは、その驚異的な記憶力です。一連のセピア色がかったスライドを見せながら、そこに登場するさまざまな方々の来歴、フルネームでの呼称、特殊な事情の指摘など、約60年前から始まる歴史を忠実にたどっていただきました。ときにソニーの大賀氏、パナソニックの松下氏の名が出てきたりして、その豊かな経験談に感心するばかり。このようにして古い話が次々と湧き上がってくるのも、記憶力の良さにとどまらず、カメラ開発一筋に徹してきた心魂のなせるところだったのでしょうか。なお、進藤様作成の詳細にわたる「カメラ開発秘話」を目にしていただくと、その記憶力のすごさが確認できると思います。
会場にD型モデルを持参されましたが、中をのぞくと精密な機械仕掛けになっており、その方面には没交渉な私でもその開発の苦労が手に取るように想像できました。ゼロから立ち上げる仕事に就けるということも、その困難さはともかく、やりがいのある仕事であったであろうことを確信いたしました。
なお今回の講演にあたり、板橋区より人手を差し向けていただき、進藤様とともに資料の整理などにあたっていただいたことを報告いたします。
最後にみやげ話をひとつ、「ゼンザブロニカ」の名の由来は、創業者である吉野善三郎氏の「ゼンザ」と「ブローニー」にあると思っていました。ところがあにはからんや、吉野氏の親戚に落語家の4代目柳亭痴楽(「綴方狂室」、「恋の山手線」を聞いた方も多いのでは)師匠がおり、後発としてカメラを世に出すのだからまずは「前座」であろうとの慎ましやかな指摘に従ったそうです。たとえ善三郎氏が善二郎氏だったとしても、どうも「ゼンジブロニカ」とはならなかったようです。
報告:高木 貢一
「渋滞と無駄のサイエンス」
第250回光交流会オプトフォーラム
代表幹事 関 英夫
担当幹事 朝倉 耕治
今回の講師は東京大学教授 西成活裕先生です。
今回のフォーラムは250回目にあたり、これまでの当会活動の歴史に一本の区切り線を引くものとなりました。
折しも2009年最後の月、新しい年の始まりとともに251回目からのフォーラムが皆様とともに連綿と続いていくよう、意を新たにしたいと思います。
今回は「渋滞」、「無駄」といった身近なテーマを、学問の対象として考え、これらの解消、そしてこれにとって変わる方法論的指針を提案されていることで有名な西成先生による講演でした。
高速道路で渋滞に巻き込まれると誰でもイライラしますし、また週末ともなれば、これはしょうがないことと半ばあきらめてしまいます。
しかし、西成先生によれば(自然)渋滞を避ける手立てはあるということでした。
それはどんなに混み合ってきても車間距離を40mに取ることだそうです。
なぜ40mなのかは、人間心理に関わることのようで、緊急時以外ブレーキを踏まずに安心して運転できる距離が40mなのだそうです。
そして全員がこの車間距離で走行すれば渋滞は起こり得ないとのこと。
しかし現実はそううまくはいきません。
急に割り込まれたりすると当然ブレーキを踏むことになり、それにつられて後続の車が次々とブレーキを踏む結果、車間距離が詰まり、1kmあたりの車密度があがり、全体としてノロノロした走行になってしまいます。
渋滞を避けたいのならばとにかく車間距離40mを守ることです。
渋滞は単にイライラするから解消したいばかりでなく、それは大変無駄なことであるというのが西成先生の考えです。
たしかに渋滞によって時間やガソリン消費量などの無駄が生じますし、また排気ガスの増加で環境にもよくありません。
渋滞は社会の無駄、この考えこそ西成先生が「無駄学」を創成したきっかけでした。
しかしなにが無駄でなにが無駄でないのかは価値観も入ってくるので、無駄の定義はすこぶる難しいものです。
「無駄ではない」のではない、こんなふうに無駄の否定をもってしか無駄の定義はできないのかもしれません。
西成先生としては、短い講演時間では言い尽くせない点が多々あったはずですし、また私たちも、もう少し時間をかけて考えてみたいとの思いはあります。
そこでぜひとも西成先生の著作を読んでみることをおすすめいたします。
代表的な著作として次のものがおすすめです。
「渋滞学」 新潮選書
「無駄学」 新潮選書
報告:高木 貢一
「製品のカルテをつくろう」
第249回光交流会オプトフォーラム
代表幹事 関 英夫
担当幹事 朝倉 耕治
今回の講師は、荒川健一 元レンズ工業組合理事長 当会サポート会員です。
11月18日に板橋区グリーン会館701号室にて開催しました。
当会は必ず講演の前か後どちらかで参加者が小グループに分かれ、お互いに自由に話し合いをすることが慣例になっています。
今回は講師が会員でしたので講演の前にいつもより多く30分程時間を取り話し合いをいたしました。
みなさんいつも以上に議論が活発になり30分が短く感じました。
講演がはじまり講演の中で講師がときどき皆さんの職場ではどうですかとの問いかけにも積極的に応答があり講師冥利につきる講演でした。
「製品のカルテをつくろう」の意味は製品の企画・製造段階から製造中止まで当該製品のすべてを記録することの意味で「カルテ」をつくろうにしました。
つくるメリットは各部署にファイルされていた文書を一元管理することで情報の共有化、また製品の技術・製造の変更、修理・クレーム情報の蓄積化が計れる、また製品に問題が発生した場合のも迅速に対応できることです。当然デメリットもあります情報を記録するのに人手をとられる、
ファイルが盗難にあえばノウハウを含め製品情報はすべて流失することです。
売上向上への戦略と戦術のヒント
第248回光交流会オプトフォーラム
代表幹事 関 英夫
担当幹事 朝倉 耕治
今回の講師は(株)IAC代表取締役社長 中小企業診断士 秋島一雄先生です。
「本日覚えて頂きたいのは、ただ一つ。
意識するということです。
それさえ覚えて頂ければ、本日は十分です。
それだけでも売上は向上します。」
と大きな声で話を始めた秋島氏は、「50人位までの講演では、いつもマイクは使いませんよ。」
とそれ以後は、約1時間ぶっ続けで熱弁を振るう。
その間、一滴の水も飲まない。
テンポの良さと迫力とお話の面白さが印象的でした。
講演は、クイズから始まりました。
スクリーンには、信号機の絵が二つ並んでいます。
「皆さん、信号機を見たことがありますか。生まれてこの方相当回見ていますよね。今日も来場される際には、恐らく見ていますよね。それもたぶん何回も見ていると思います。
それでは、質問です。
信号機の赤いランプは、左右どちらについているでしょうか。挙手を御願い致します。」
その言葉と同時に、皆の頭が左右に動く。
「そうですね、大体半分半分といったところでしょうか。 どこの会場でも大体同じ結果です。半々くらいです。」
正解発表後、
「皆さん、これだけ見ている信号でも、左右のどちらが赤なのか。覚えていませんよね。
何故か、、、『意識して見ていないから』です。
仕事もこれと同じです。
毎日していても、意識してなければ、見えているのに、見えないのです。
だから、意識するだけで、見えて来るのです。」
そして、又、クイズ。
「人・物・金・情報の内、一番変化が早いのはどれでしょうか。」
「はい、あなた。」と一人指名します。
「情報です。」
「はい、正解。人・物・金・情報という先程の順番は、変化が遅い順に並んでいます。
つまり、人が一番変わりにくい。だから、一番に人を変えていかなくてはならない。」
なかなか掴みがうまいなぁと感心していると、戦略の話が始まった。
戦略は、どうするのか。なかなか考えが出ませんよね。そこで、戦略という考えを分けてみましょう。
分からないことも、分けると分かる。
戦略とは、つまり、
誰に・何を・どうやって売るのかに尽きますよね。
この3要素を全て変えては、
その会社の良さを生かせませんよね。
だったら、その内1つだけ変えてみたら。
今までの顧客へ、今までの物を、
今までの売り方をしているのが、
今の状況。だったら、
今までの顧客へ、今までの物を、
違う売り方をしてみては?
今までの物を、今までの売り方で、
違う顧客へ売ってみては?
今までの顧客へ、今までの売り方で、
違う物を売ってみては?
こう考えると、戦略も考えやすいですよね。
「誰に・何を・どうやって売るのか」」を敢て意識してみる。
そうすると、自ずと戦略が見えてくる・・」
この後、どの部分でもよいので1番になる意識を持つ、
自社の強みと弱みを意識してSWOT分析を行なう、
マーケティングの4Pなどの話を熱弁。
戦術では、「売上=客数×客単価=(新規+既存×リピート率)×客単価」の式を意識し、
売上マトリクスの話を。
戦闘では、提案営業の極意、最後は御自分の経験を話されていました。
以上、あっという間の1時間でした。
レポート:朝倉 耕治
大切な人と今よりもっと理解し合うための2Wayコミュニケーションのコツ
第246回光交流会オプトフォーラム
社内でのコミュニケーションはうまくいっていますか。もっと自然にもっとお互いを理解するためにコミュニケーションについての講演を企画しました。もちろん取引先とのコミュニケーションも良いに越したことはありません。
代表幹事 関 英夫
担当幹事 高木 貢一
今回の講師は(株)FeelCommunication代表取締役の桐生純子先生です。
はじめに、コミュニケーションを苦手としている方は?との問いが発せられました。見たところ8割ぐらいの方々が手を挙げました。かくも多くの方が手を挙げたことには納得がいきます。あらためてコミュニケーションの難しさを確認させられました。
われわれは多くの場合、意識することもなくコミュニケーションの当事者としてその役割を演じています。そのためか、ときに自分が気付かなくとも相手にとっては大切な場面であった、ということが多々あります。たとえば相手がなんらかの言葉、反応を期待しているとき、そこには相手からのなんらかのサイン(ことば、表情、しぐさなど)があったはずですが、ついそれを見落としてしまう、結果として相手を傷つけてしまったということは誰でも経験されているでしょう。
相手から発せられたサインに敏感となり、真の思いやりをもって対することの大切さ、桐生先生も親と子のあいだのコミュニケーションの例を引いてその点を強調されていました。とはいえこればかりはそう簡単に実践できるものでもありません。日ごろ人と接するなかで、でそのような心持も自然と湧き上がるような精神性が必要のようです。これはスキルを身につけるというようなことではない、とのことでした。
次に、先生の指示にしたがって「お絵かき」をしました。はじめに丸を二つ描いて、次に丸の中に小さな黒丸を、云々、といった具合です。
先生は人間の顔のつもりだったのですが、その結果できあがった絵は参加者のあいだで大きく違っておりました。
コミュニケーションにおけるノイズともいうべきもの、情報の不足あるいは情報の誤った送受信がその原因です。思うに、残念ながらもそれらを回避する決定的方法は無いのではないでしょうか。「不足」に気付くには「足りている」ことの理解が前もって必要ですし、またヒューマンエラーを無くすことが不可能であるように、情報の受発信場面における理解の不一致を完全に一掃することは無理でしょう。ここには解決困難な大きな問題があるように思われます。せいぜい情報を伝える側からは懇切丁寧な説明を分かりやすい手段をもって発するということぐらいなのでしょうか。
楽しくもあり、しかも意義ある講演が終わったあとは、近くの中華レストランで8月恒例の納涼会となりました。
文:高木 貢一
100年に一度と言われるこの大不況、あなたの仕事の危機管理は大丈夫か
光交流会第245回 光交流会オプトフォーラム
今回は通常行われている技術的なテーマを離れ、今回は現実の経営に欠かせない危機管理をテーマとしてフォーラムを開催いたしました。
代表幹事 関 英夫
担当幹事 吉村泰信
第245回オプトフォーラムは危機管理をテーマに講演会を開催した。「100年に一度と言われるこの大不況、あなたの仕事の危機管理は大丈夫か」と題して、(株)神田総合研究所、代表取締役、岸本豊氏(法務博士・行政書士)にご講演をお願いした。
はじめに、グリーンスパン氏(前米連邦準備制度理事会議長)の言葉「100年に一度の津波」を引用され、現状の経営環境について簡単に説明がなされた。
戦後の混乱期は今よりももっと厳しい環境であったはず、わが国はまだまだ底力はある。実業・正業に需要あり。購買力もある。悲観的に情勢を見つつ、楽観的な心で緻密な対応を検討し実行する。厳しい状況下こそ実践的な危機管理が大切である。
危機管理はリスクマネジメントの一部であり不測の事態に備え、極力発生させないようにする。
発生時の影響を最小限に努め、発生を早期にキャッチできるようにすること。と述べられた。
世間によく知られる企業の過去にマスコミで報じられた不始末内容を例に出され、日常における危機管理の重要性を話された。企業は財務的に良好ならば、それで良しとは言えない。何事にも余裕の少ない経営では、内部に危機の原因を蓄積することになり、危機発生に転じる。危機への対応を誤ると、一挙に業績悪化・信用喪失・破綻の危機に見舞われる危険性をはらむことになる。
危機の種類と対応について、製品不良発生時の迅速且つ的確な対応の重要性。取引先の倒産および経営危機の対応として、債権の種類とその額、弁護士との相談、強引に債権を取り立てると後々に法的に不利になる恐れがあるゆえ注意が必要。役職員の事故回避策として、リスクの高い行動には分散行動、人材のバックアップなど。設備・施設の事故対策としてデータのバックアップ。資産管理には、早期察知の重要性、管理のための努力を惜しまない、高いリスクを伴うことに手を出さない。
個人情報漏洩とセキュリティーについて、個人メールの監視体制・携帯は・貸出し・資料の持ち出し禁止・出入り口での抜き打ち検査などの例が述べられた。
法的リスクとしてコンプライアンス、セクハラ・パワハラ等の人権問題、著作権等の侵害など注意を怠らないこと。その他、苦情やクレームの対応・風評・役職員の犯罪・内部告発・外部からの犯罪行為など企業にもたらされる危機の種類が述べられた。
リスクマネジメントとして、リスク要因ごとの発生確率、ダメージの大きさを評価し、危機防止のための経営資源の投入を最適化して対応する。
危機管理委員会を設け、どんな危機が潜在しているか、そしてその危機ごとにどう対応しなければならないか、事前に概略を検討しできればマニュアル化を行い、年に1~2回の見直しを実行する。業務がどの様に行われたのか、を出来る限りトレースできる体制を整えておくことが重要と述べられた。
危機発生時の対応として、先ず責任者をはじめ対策によりふさわしい人選で対策の体制を整えること。マスコミ対応について、事実をつたえる。責任は何かを明確にする。誰に対して何を謝罪するかを明確にする。損害賠償の責を負ったら、何に対してかを明確にする。緊急時対応、応急処置、回復、修復、再発防止策などについて必要なことを伝える。
また、日常において企業風土・企業文化の練磨に努める。このレベルが高いと製品不良発生時にも適切・円満に収拾しやすい。他に重要なことは組織の連帯感・チームワーク・情報伝達とフィードバック体制の確立。要所での相互協力・相互チェックが重要である。
「人は間違うもの、魔が差すことがあるもの」と知って平時の対応を怠らない。 以上
レポート:吉村