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38.部分的コヒーレント結像の考え方 8

光学設計ノーツ38.部分的コヒーレント結像の考え方 8
部分的コヒーレント光学系の結像式について
これまで扱ってきた部分的なコヒーレンシーの概念を導入する事により、より一般的な結像の表現、定式化が可能となる。
ここではその重要な表現手段について解説させていただく。
図1のような結像系を考える。
左からインコヒーレントな一次光源面S:座標(xs,ys) 、透過物体面:(X’,Y’ )、結像光学系入射瞳面、射出瞳面:(x,y)、像面:(X,Y)である。
  
ここで、光源面と物体面のコヒーレンス度の間にはファン・シッター-ツェルニケの定理によりフーリエ変換の関係があり、フーリエ変換内の指数関数は、2平面の距離をD,物体面上の2点間の距離を∆X’、∆Y’として本連載33回(16)式より・・・
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株式会社タイコ 牛山善太

37.部分的コヒーレント結像の考え方 7

光学設計ノーツ37.部分的コヒーレント結像の考え方 7
部顕微鏡の照明による解像力の変化
今回は、物体を照らす、顕微鏡の照明系のあり方により、コヒーレントに照明される物体領域が変化し、対物レンズによって得られる物体像の解像力が変化する様子を解説させていただく。 
光学設計と部分的なコヒーレント結像の考え方を最も顕著に結びつける部分でもある。
1.臨界照明法
物体平面上の近接した2個のピンホールを考え、それらが臨界照明法(図1)により照明される場合の、光学系(対物レンズ)による結像について、レーリーの解像限界を用いて検討してみよう。
図1に示すように、S、O、O’をそれぞれ光軸に直交して存在する光源面、コンデンサーレンズ主平面、物体平面(ピンホールが存在)とし、物体面上のピンホールをP1(X1,Y1),P2(X2,Y2)とする。一般的に物体面上における光源の像(2次光源)の大きさは、光源点の点像のエアリーディスクより遥かに大きい。
本連載35回(20)式の状態である。本連載33回で検討した如くに、この様な場合には物体面における複素コヒーレンス度は、コンデンサーレンズの射出瞳にインコヒーレントな光源が存在する場合と等しい。
さて、これらのピンホールにおける複素コヒーレンス度μ12については、コンデンサーレンズの収差が存在しないと仮定し、開口面領域がそう大きくなければ、ファンシッター・ツエルニケの定理より・・・。
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36.部分的コヒーレント結像の考え方 6

光学設計ノーツ36.部分的コヒーレント結像の考え方 6
部分的にコヒーレントな照明領域での照明系の収差の影響
今回も部分的にコヒーレントな照明、結像について考えさせていただきたい。
インコヒーレントな領域での照明形の収差について考えた前回の続きとなり、今回は部分的にコヒーレントな照明光学系の性質について考えさせていただきたい。
1.照明光学系による部分的コヒーレント照明
本連載前回と同じように半径ρの円盤光源Σの半径ρ’の像Σ’が光学系Lにより得られている。
この時、開口絞り面上の点を通過する光線の、入射瞳、射出瞳座標上における対応点をP1、P’1、そしてもう一組P2,P’2とする。
本連載前回、(35-19)と(35-20)式、(像面上のこの照明光学系による点光源像におけるエアリーディスク半径をr’Aとして)
照明光学系の射出瞳全体がコビーレントな状態・・・
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株式会社タイコ 牛山善太

35.部分的コヒーレント結像の考え方 5

光学設計ノーツ35.部分的コヒーレント結像の考え方 5
コヒーレントな領域、照明系の収差の結像への影響
今回も部分的にコヒーレントな照明、結像について考えさせていただきたい。
今回は光源と被照明面の間に照明光学系が存在する場合の、より照明系としては一般的な状態を扱う。
照明光学系の収差の影響についても言及する。
これまで暫くの間、解説させて頂いてきた部分的なコヒーレント結像論には一般的な光学設計的理論とは趣が異なり、確かに取り付きにくい面もあるが、式間のコメント等も増やしてよりご理解いたたき易い様に心がけた。
エンジニアリングにおいては、わかり易い説明、秩序立てというものは本質的に重要なものである。
1.照明光学系によるコヒーレント照明、インコヒーレント照明
図1にある様に光軸に対して回転対称な系を考える。
本連載前回と同じように半径ρの円盤光源Σの半径ρ’の像Σ’が光学系Lにより得られている。
この時、開口絞り面上の点を通過する光線の、入射瞳、射出瞳座標上における対応点をP1、P’1、そしてもう一組P2,P’2 とする。
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株式会社タイコ 牛山善太

34.部分的コヒーレント結像の考え方 4

光学設計ノーツ34.部分的コヒーレント結像の考え方 4
Hopkinsの公式について
今回は前回における式を用いてコヒーレントに照明され得る領域、また均一空間において考えられたファン・シッター-ツェルニケの式を、様々な伝播状態の想定出来る表現へと拡張する。
1.コヒーレントに照明される領域
ここで、光源Σが光軸を中心とする半径ρ、面積Sの一様なインコヒーレントに発光する円盤であるとすれば、光源から軸上距離Z離れた平面上の点Q1’(X’ 1,Y’1)、Q2’ (X’ 2,Y’2)における複素コヒーレンス度μ12は光源強度のフーリエ変換の形として本連載33回(16)式 ・・・。
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33.部分的コヒーレント結像の考え方 3

光学設計ノーツ33.部分的コヒーレント結像の考え方 3
点光源を仮定すれば、コヒーレンスの問題は時間的コヒーレンスに集約される。この場合、前節で取り上げた、光源の周波数分布特性E(ν)が複素コヒーレンス度μ12に影響を及ぼす。
また、電球のフィラメントの様に、光源がそれぞれ、タイミング的にばらばらに光波を発する微小光源により成り立ち、インコヒーレントな面積を持つ時、この様な光源の広がりも、μ12に影響を及ぼす。この影響は空間的コヒーレンスと呼ばれる。
ここでは光源の強度分布とそれによる被照明面(2次光源、或いは照明されている被写体と考えても良い)におけるコヒーレンシーの関係について解説させていただきたい。
1.ファン・シッター-ツェルニケの定理
ここからは、この空間的コヒーレンスを取り扱うために、時間的コヒーレンスの良い光源を仮定しよう。
つまり、準単色光源の集合により光源面が形成されているとする。M個の微小光源(点光源)の集合と考えられる、準多色光源の中心各周波数をω0、とする時、図1にある様に、光源面上の点Smから放射される光波による受光面上の点Q1‘(照明されている、被写体、2次光源 と考えることも出来る。)における、時刻tでの複素振幅は、これら2点間の距離をL1mとして、球面波の進行を考え・・・
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32.部分的コヒーレント結像の考え方 2

光学設計ノーツ32.部分的コヒーレント結像の考え方 2
準単色光
前回から引き続き部分的なコヒーレンシーの扱いについて考える。
光学設計においては点光源から発した、純粋に単一波長の光波(光波が途切れず常に一定の波長の波が放射され続ける場合を表す。
波長が一定でも、放射がとぎれとぎれであったりすれば、それは周波数解析的に考えればいろいろな周波数の波動が含まれていることになる。)の振る舞いを考えるわけであるが、これは明らかにコヒーレントな光波の扱いである。
そして、それら点光源が多数集まり像を形成すると考えて良いのであるが、光学設計の多くの場合には、これ等の点光源、点像に関しては互い放射光に関して、その位相的には相関が無く、無秩序に発光し、互いに干渉しない、干渉縞など生成しない、と考えるインコヒーレントな物体面を想定する。
また、実際にその様な被写体が多く存在するわけである。
しかし良く考えてみると、光源内の2つの点光源同士の位相が一致しなくとも、それぞれから完全に単色の光波が出ていれば、波連は無限に続くわけであるから隣接光源同士の光波の位相関係は一定となり、観測に際しての時間平均をとっても、ヤングの干渉実験の如くに干渉が観測できることになる。
実際のインコヒーレント光源においては周波数幅をある程度もっていたり、波が断続的に放射されたりしてこうしたことは起こらない。
いずれにしても上述の通り、ある微小な周波数帯域、波長幅を想定しないとインコヒーレントな光源というものが成立しない。
そこで、“極微小な波長幅で色々な波がある程度混在している”、とすれば様々な組み合わせで若干波長が異なろうとも狭義の干渉が起こるのであるが、これ等の干渉状態は、波長が僅かにでも異なるので時間とともに変化し、時間平均の観測を経れば(広義の)これらによる干渉縞は現れないことになる。
また同一波長の光波同士も、初期の位相関係が波長ごとにランダムに異なればそれぞれ異なる位置にランダムに干渉縞が生成され、それら無数の縞が重なり合い干渉は観察できない。
また、上述の点対点の光源-像の関係を考えるときには、波長域が非常に狭いとすれば、これまで考えてきたコヒーレント結像の理屈が成り立つような都合の良い光波が想定出来れば良い。
これを準単色光と呼ぶ。以下、この準単色光について、そしてそこから得られる部分的コヒーレント結像の表現について考えよう。
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株式会社タイコ 牛山善太

31.部分的コヒーレント結像の考え方 1

光学設計ノーツ31.部分的コヒーレント結像の考え方 1
結像がコヒーレント、インコヒーレント、或いは部分的にコヒーレントか、如何なる状態において為されているかを考えることは、例えば面積的に広がりを持つ結像を扱う場合には非常に重要となる。近隣の点像同士の干渉を考慮せねばならないからだ。 
これまで考えてきた様に基本的な波動光学理論では、完全な単色光、あるいは完全な点光源を想定したり、(これは完全なコヒーレントな設定であるが)、これ等の光波が完全に位相関係を保ち像面に達するか、あるいはまったく位相的に無秩序に達するかどちらかの完全にコヒーレントな、あるいはインコヒーレントな両極端の状態を、瞬間的強度などという実際には測定のしようの無い量を用いて表現する。言わば端正な世界である。
しかし、本来はこうした完全な状態の光の場は存在せず、その中間の状態をとる。
この様なより一般的な状態を部分的コヒーレントな状態と呼ぶ。
部分的コヒーレントな状態は、斯様に必ずある程度の大きさをもった光源、ある程度広がりをもった波長域における光波を対象にし、実際に測定にかかる物理量を基にして考察されることとなる。以下は重に参考文献1)に沿って解説させていただく。
1.コヒーレンシーの表現について 
 図1にあるように大きさを持つ非単色光源により照明される遮光面上のピンホールQ1、Q2、そして観測点Qを考える。
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30.幾何光学的OTFについて

光学設計ノーツ30.幾何光学的OTFについて
本連載において何回かOTF,MTFについて触れさせて頂いてきたが、ここでは幾何光学的近似の下でのOTFについての基本的な内容について触れさせていただこう。
その適用に際しては様々な限界は勿論あるものの、幾何光学的近似による計算の簡便性だけでなく、瞳収差の影響を受けない、直ちに光軸に直交する平面上で総ての像高での計算を出来るなど、計算経済性の面においては非常に優れた面を持っている。
現在でも光学設計において最も重要な総合的評価手法の一つである。
1.スポットダイヤグラム、幾何光学的強度の法則によるOTFの計算
幾何光学的にしろ、波動光学的にしろ何れかの手段で像面上の点像強度分布I(x,y)が得られれば(5)式によりOTFを計算することができる。
ここでは、本書においてここまでにたびたび取り扱ってきたスポットダイヤグラムを用いて、最も多く光学設計において用いられているであろう、所謂幾何光学的OTF、OTFG(s,t)を算出する方法について考えよう。
ここで光学系の瞳の面積をAとして、瞳上の単位面積を通過するエネルギーを均一に1とすれば、光学系を透過する全光量はAであり、スポットダイヤグラムより得られる強度分布(像面単位面積あたりに到達するエネルギー)をIp(x,y)なる関数で表すとすれば、本連載24回(9)式より
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29.軸外結像におけるフラウンホーファー回折像について 

光学設計ノーツ29.軸外結像におけるフラウンホーファー回折像について 
本連載、前回においては無収差結像光学系による結像がフラウンホーファー回折像と成ることについて触れたが、今回は一般的な画像評価のために繋がる、軸外結像におけるフラウンホーファー回折像について考える。
全画面、無収差結像の光学系においても、一般的な構造の光学系では、軸上に較べ、軸外における解像力は低下することが分かる。
1.結像光学系の瞳関数
これまで用いられてきたg(x0,y0)は、スリットの形状を含め、スリット上の振幅、位相変化などの複素振幅を表す。
これを瞳関数(pupil function)と呼んだ。
この瞳関数g()にスリットの情報のみならずレンズ系透過の際のさらなる情報を含めることができる。
それらは例えば、レンズの瞳形状であり、瞳上フィルターの透過率の情報である。
そしてこれが非常に重要であるが、こうした瞳形状、瞳上フィルター、あるいはレンズの位相変換機能(平面波を球面波に変換する様な)以外の場合の、レンズ透過の再に生じる位相ずれを瞳上の関数として考慮することができる。
これはまさしく収差そのものである。
収差によって生じる位相ずれを、無収差の場合の参照球面との光路差として示したのが、波面収差であるから、瞳関数に波面収差を直接用いることにより、収差を持つ光学系の結像をフラウンホーファー回折像として評価可能となる。
瞳関数の一般形は以下の様に表現出来る。
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