「テラヘルツ量子カスケードレーザ、および深紫外領域でのLEDの開発」

光交流会 271回オプトフォーラム
講 師 : 理化学研究所 基幹研究所 テラヘルツ量子素子研究チーム チームリーダー 平山 秀樹氏
今回のご講演では、理化学研究所 基幹研究所 テラヘルツ量子素子研究チーム チームリーダー 平山秀樹先生より、先生が研究をされているテラヘルツ量子カスケードレーザ、および深紫外領域でのLEDの開発に関する2つの内容についてご講演をいただきました。
 まず、テラヘルツ量子カスケードレーザの開発についての最近の研究動向をお話頂きました。2011_271_02
電波よりも短波長で光よりも長波長である1THz~10THzの領域を扱うテラヘルツは、反射や集光といった光としての特性と、電波としての透過の性質の両方をあわせ持つため、短波や可視光領域では不可能であった様々なものを透視して検査するのに有用であるとのこと。
特に、X線は人体に有害であるのに対し、テラヘルツは無害であるということで、医療分野に大きな役割を果たすと期待できるとのことでした。テラヘルツ量子カスケードレーザは高温での動作が非常に困難であるが、平山先生はこれまでに最高温度190Kを達成されており、常温での動作まで今一歩のところまで来ているということでした。
 深紫外LEDの開発に関するご講演では、深紫外LEDの非常に低い発行効率をいかにして向上させて来られたかについて、分かりやすくご説明して頂きました。
 深紫外LEDにはAlGaN系半導体が利用されるが、LEDの発光効率を表す外部量子効率は約0.01%と非常に小さい。この発光効率を、平山先生は「内部量子効率」と「電子注入効率」を改善させることによって約300倍である3%程度まで向上させることに成功しています。
それぞれ、「内部量子効率」は「アンモニアパルス供給多層成長法」と呼ばれる手法を考案することによって1%以下だった効率を50~80%に改善し、また「電子注入効率」は、電子がp型半導体層へすり抜けてしまうのをブロックする「多重量子障壁(MQB)」を世界で初めて導入することによって、20%以下から80%に飛躍的な向上を実現されています。
 今回のご講演で、LEDの発光効率の向上には様々な方面からの技術アプローチが必要不可欠であることを痛感させられました。
そこには、豊富な知識が必要であることもさることながら、並々ならぬ開発の努力があったのではないかと感じます。
今後の課題は「光取り出し効率」を8%から30、40%に引き上げること、さらには、青色LEDの発光効率80%と同等を目指すことにより深紫外LEDの実用化レベルの実現を目指すことだそうで、先生の今後の研究に対する熱い意気込みが伺えました。小型で長寿命、低消費電力である深紫外LEDは、小型殺菌灯への応用や、高密度光記録への応用、光触媒への応用が可能ということで、実現の際には非常に幅広い分野に普及していくことが期待できます。
 テラヘルツ量子カスケードレーザ、深紫外LEDどちらの内容に関しても私にはなじみが無いものでしたが、要素技術から実用展開まで幅広く、また非常に分かりやすくご説明を頂き、今回のご講演は大変有意義なものとなりました。
平山先生には、ご多忙の中、非常に興味深く貴重なご講演をいただきましたことを改めて感謝申し上げたいと思います。
また、これからの益々のご活躍をお祈りしたいと思います。
担当幹事:田中 政之介

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