光線の進行経路を考える上で非常に重要な意味を持つ、フェルマー(Fermat)の原理は、
次の様に表現される。点 Pを通過した光線が点 Qに達する時、Pから出た別の光線と互い
の光線経路が交わら無い場合に、という正則の条件のもと、
“点Pから点 Qに到達する光は、その光路長が停留値(多くの場合、最大値、あるいは
最小値)をとるような唯一の光路を経る。”
この正則の条件においては、一つの点光源から射出した幾つもの同族光線が集中する共
役点 Qは除外される。また P, Q が、共役関係にある場合以外でも、Qが同族光束中、収差
を持った周辺光線と主光線の交点である場合も除外される(図2)。図中のこれら 2光線はそ
れぞれの近傍で光路長が極値をとることに、その近傍においてのみ最小値をとることにな
る。
図 2 光路長の異なる2点間の光線経路
因みに、図 3にある様な収差の大きな光学系において、光軸から離れた絞り座標位置を
通る近隣光線同士の像界における交点を繋げて行った包絡線(火線)により形成されるもの
は火面(caustic)と呼ばれるが、図からも分かる様にフェルマーの原理を定義した際の点 Q
を光軸上、屈折面より右に配置すると考えれば、火線より左(内側)、屈折面に近い領域で
は、光軸上を経由する光路と、屈折光が Qに達することができ(図2)、正則の条件からは外
れる。この場合、点 Qの立場からすると、火線より外の領域が正則の領域となる。
理想像面
無収差光線
軸上光線
P Q
P’1