義である。
像面上の強度分布を求める為に回折積分を行なう時、任意の面での振幅と位相の分布が分か
れば回折計算は可能であるから、その積分が参照球面上で行なわれるとすれば、実際の光線通過
経路に沿って実波面からその光線が参照球面に到達するまでの光路差を得ることは、妥当なやり方
である。
その光路長差を知る事により参照球面上におけるその光線通過位置での実際の位相が正確に
計算できるからである。こうした回折計算を行う場合には、大抵、参照球面までの光線追跡が行われ
そこまでの光路長が計算されることとなるので、計算或いは理論展開における実用性を考慮した定義
である。
b)
より形式的に考えて、回折積分が等位相面である実波面上で行なわれるとする時、この場合に
は回折積分に際し実波面上の点 Qから観測位置 P’0(回折強度分布を計算する像面上における位
置)までの距離が重要になる。実波面上に2次波源が存在し、そこからの総ての2次波の影響によっ
て測定点における振幅を得ようとすることがホイヘンスの原理を基とする回折計算の理屈であるが、こ
の考へ方における波面収差とは Q、P’0方向に定義されるべきである。より一般的に表現すれば、波
面上の点と測定点を結ぶ線分に沿った∆
W
‘を採用する、と言う事である
。
この線分の参照球面から P’0までの距離は参照球面半径として一定であるから形式的にはこの
線分に沿った実波面から参照球面までの距離が重要になる。この距離を波面収差とする考え方であ
る。
また、実際の波面測定結果などで波面収差の量を示す場合には理想的波面中心へ向けての光
路長差として示される事が一般的である。
前者の計算手法に後者の波面収差量を用いれば位相が可笑しな値になって結果が狂う。また
逆に後者の考え方においては実波面上の点 Qの座標を求める事が最重要になり、波面収差分もここ
に含まれてしまうが、前者の波面収差量の定義を混同して用いる事は、少なくともそれらの誤差の検
討無くしては、筋が通らない。
原理的には明快なのであるが、上記b)の定義においては、光線に沿わない∆
W‘
の計算を総て
の光線に対して実行することは、不規則な 3次元的な波面形状をコンピュータ内で構成することにも
なり、非常に煩雑な作業になる。妥当な計算誤差の内に収まるのであれば∆
W
を波面収差として常に
採用する方がより実際的であって、参照球面中心方向に測った距離を、この Q’を通過し P’へと向かう
光線に沿った距離に置き換えて、一般的には、波面収差は定義される。勿論、そこには上述のように
理論的な根拠が存在するわけであるが。
それでは、ここで、これら二つの定義の違いにより生ずる誤差について考えてみよう。(主に参考
文献1)に拠る。)