光学設計ノーツ
光学設計ノーツ 16 (ver.1.0)
波動光学的波面と幾何光学的波面
(フレネル積分を用いた幾何光学的波面適用限界の考察)
文字通り、物理的には波面と言えば後者を指すのであろうが、光学技術分野においてはむしろ、前者を
示している場合も多く、少々複雑でもある。
1. その定義の違い
基本的は以下の定義が一般的である 1)。
波動光学的波面:複素振幅等位相な座標が形成する面
幾何光学的波面:光線に沿った等アイコナール点が形成する面
(幾何光学的波面は従って、光線経路に沿った等位相面でもある。)
これらの波面が場合によって異なるのは明らかである。幾何光学的波面はあくまでも光線に沿ったア
イコナールによるものであるため、回折の影響はそこには含まれ無い。本稿 3節において扱うが、光軸に
平行に進む平面波が有限の大きさの開口を通過しても、幾何光学的波面はもとの無限に広がる平面波
の一部が開口により切り取られたが如く、その平面性、面積を維持したままどこまでも進行していく。実際
には回折現象により光波はある程度の広がりを持ってしまう訳であるから、こうした物理的、波動光学的な
波面と、幾何光学的波面の形状は乖離する。
2. 計算手法
これら波面の計算手法について、ここで考えさせて戴きたいのであるが、幾何光学
的波面については本連載においても詳しく触れている。細かい事を省いて表現すれば、スネルの法則に
基づく光線追跡をして、一点から射出した多数の光線の光路長が一定となる面を求めればよい訳である。
ここではさらに詳しくは述べない。
波動光学的波面もホイヘンス-フレネルの回折積分により、任煮の位置における複素振幅が計算で
きるので、その理屈により等位相面が得られるという楽観的な表現も可能かと思うが、波面形状を求める
場合だけでなく、ある場所における複素振幅が、そこに影響を与える複素振幅場(ホイヘンス的考えであ
れば2次波源場)の影響の合成として、元の複素振幅場と同様の形で、最大振幅、位相を持つ複素振幅
関数として表現されえる事は、当たり前の事の様でありながらも、重要な事柄なのでここで、検討させてい