従って、(14A)式は物界、像界でそれぞれ入射瞳、射出瞳に張られる全立体角について定積分する形に
成り、
uu dSdnddSn
0
2
0
2sincossincos
(15)
と出来る。ここでは
dS
のみならず
dS’
もα、α’の変化に対し変化しないと仮定している事に注意を要す
る。また、(14B)式の関係が複雑化し、例えば 2 次式になるとき、被積分関数において g(kα2
)×kα(k:
定数)の形に成り(14D)式に置けるような簡潔な関係は得られない。
さて、(15)式の辺々積分を実行して整理すると
un
un
dS
Sd
22
22
sin
sin (16)
dS’
と
dS
の比は本来、結像横倍率β’の2乗となるはずなので、(16)式は
un
un
sin
sin
(17)
この(17)式は正弦条件と呼ばれ、光学設計において、また、幾何光学的結像を考える上で非常に重要な関
係である。
光軸上に存在する点 Aが無収差に A’に結像するとすれば、αの変化によって A’を含む光軸と垂直な
平面、像面の光軸方向の位置は変化しない。もしこの時、(17)式で表わされる正弦条件が満たされないと
すれば、それは結像倍率が一定でなくなり、Bの位置が定まっている場合、結像倍率を決めるのは B’の位
置であるから、軸外物点 Bから射出した光線の像面上での到着位置が微小光束[クラウジウスの関係導出
の際には無収差としている。]の角度座標α[この値は微小である必要は無い。従って、αの異なる微小光
束ごとに収束点 B’の位置が異なる事、つまり ds’が一定でなくなる事は十分に有り得る。]により異なり、
B’がαの値の変化により、一つの点として存在しなくなることを、つまり収差の存在を意味する。
正弦条件は、光軸上の収差(球面収差)が無いとき、光軸近傍の軸外物点からの同族
光束内の総べての領域において、微小光束の取り方の変化により倍率のずれ(コマ収差)
の生じないための条件であり、結像光学系の構成上、最も基本的な条件の一つとなる。使
用に耐え得る結像光学系の殆どのものが、この正弦条件をある程度満たしていると考えて
差し支えない。
3. 参考文献
1) 鶴田匡夫:第4・光の鉛筆 (新技術コミュニケーションズ、東京、1997)
2) 牛山善太、草川徹:シミュレーション光学(東海大学出版会、東京、2003)