ver.1.0)
輝度不変則に拠らない正弦条件の導出
これまで既に、正弦条件については解説させていただいた。そこでは輝
不変則を利用した導出を行なった。ここでは、よりオーソドックスな光線光学
的導出方法について解説させていただく。内容は主に下記、参考文献欄の文献
により紹介されている内容による。
1. 有限倍率時、軸上の正弦条件
ここで、光路図をもって正弦条件がどのように成立するか考えてみよう。
図1において、O の像 O’が収差無く結像していて、微小物体高yにおける物
Pの像 P’にも同様の無収差の結像が起きているとする。まず、光軸に沿って
Oから Cを経て O’に到達する光線を考える。また同様に Oを出発して光軸方
向ではなく、光軸と角度θを為し O,R,O’と言う順に進む光線も考える。このと
き光軸と角度θを為し O’に到達するとする。さらに軸外物点 Pから光軸に平行
に出発し Sを通過し P’に至光線を考える。この光線は当然、像側焦点位置fを
通過するはずである。また同様 Pから今度は、先般の光線 ORO’と同じ光軸
との角度の光線の射出を考える。この光線は PQP’と言う光路を通るとする。
するとこの場合にも物界において光線 PQ OR は平行であるから、近軸像
f
O
O’
f’
P
P’
M
M’
y
y’
θ θ
Q
R
S
C
n n’
1 有限倍率軸上の正弦条件の導出
平面上の f’で交わる事になる。ま Pから光線 OR に下した垂線の交点を M
P’から光線 RO’への同様な垂線の交点を M’とする。
すると、それぞれの光路長に沿っての光路長を考えれば、軸上は無収差であ
るから(球面収差が無い)、
[ORO’] [OCO’]
軸外結像においても P,P’間の結像に収差が無ければ(コマ収差が無い)、
[PQf’P’] [PSfP’]
であり、これらの辺々差をとっ
[ORf’][PQf’][f’O’][f’P’][OCf][PSf][fO’][fP’] -(1)
1において
1) 波面 PM で表される平面波の収束点が f’である。
2) y’は微小な量であり、波面 P’M’の収束点も f’と考えれば、同一波面上の
点から f’までの光路長は常に等しく、f’P’≒f’M’
3) 同様に fO’≒fP’も成立する。
よって、
[OM][O’M’][fO’][fP’]=0
従って物界、像界の屈折率をそれぞれ n,n’とすれば
0sinsin
ynny
y
y
n
n
sin
sin (横倍率) -(2)
これが所謂、正弦条件である。
2.軸外の正弦条件
上述の考え方は軸外のメリディオナル面内での正弦条件導出の際にも、
OCO’を軸外光束主光線として扱えば、そのまま応用できる。(2参照
2にある様に、軸外の物点 Oが軸外の像点 O’として無収差で結像してい
る場合を考える。Oから微小距 yにある軸外物点 Pの、O’からやはり微小距
y’離れた像 P’を考える時、上記(1)式がそのまま成り立つ。
[ORf’][PQf’]}+{ [f’O’][f’P’]}={ [OCf][PSf]}+{ [fO’][fP’] (1’)
光線 OR が光軸と為す角度をα、光線 Rf’O’が光軸と為す角度をα
物点 Oと前側主点を結ぶ光線の光軸との角度をw、後側主点から像点 O’に達す
る光線の光軸と為す角度をwとすれば、(1’)式の中括弧内の項がそれぞれ以下
の4項に対応し、
wynwnyynny
sinsinsinsin

wynwny
sinsinsinsin
(3)
3.倍率無限時の軸上の正弦条
f
O
f’
y
y’
Q
R
S
C
図2 軸外正弦条件の導出
α w
α
W’
n n’
O
O’
P
P
この場合も殆ど既述と同じ考え方が用いられる。
3において無限円点光源からの光軸に平行な光線の一部を PQ と表現し、こ
の光線が近軸像点 O’に光軸と角度 u’を為し達している。Pから光軸に下した垂
線の交点を OPO 間の距離を
h
とする。
は微小な値である必要は無い。
さらに Pから光軸と微小な角度θを為し光学系に入射する光線 PR を考え
る。この光線は像界で近軸像面上の点 P’に到達する。O’P’の距離を y’とするy’
も微小な量と成る。この時 PH,H’前側主点、後側主点とする時、OHf
と成るように取ってある。当然HO’f’でもある。
さらに Oから PR と同じ角度を光軸と為し光学系に入射する光線を考える。
当然この光線は、P’での軸外結像においてこの光学系が無収差であれば近軸像
面上、P’において光線 PR と交わるはずである。する
[PQO’][OCO’]
[PRP’][OSP’]
nh
sinθ
辺々引き算すると、
sinsin nhuyn
y’は微小量なので、y’/f’=θsinθ≒θであるから
nhufn
sin (4)
また、主点入射し、射出する光線の角度の関係は
M’
O
O’
P
P’
h
y’
u
Q
R
S
C
nn
ff
図3 倍率無限時、軸上の正弦条件の導出
θθ
H H’
n
n
(5)
であるから(4)式は
u
h
f
sin (6)
となる。これが倍率無限時の軸上の正弦条件である。
4.参考文献
1) :基(東、東、1997)
2) :第4・光の鉛 (新コミュニケーションズ、東、1997)