光学設計ノーツ 25(ver.1.0)
結像の評価 正弦波格子チャートと MTF
今回は正弦波状の格子チャートの光学系による結像を例にとり、OTF そして MTF、PTF
の特質について解説させていただきたい。
1. 正弦波格子チャートと線像強度分布の畳み込みにより像強度分布を得る
ここで任意の周波数sを持つ、正弦波格子に着目してみると、この正弦波格子模様に直角方
向にx座標を採り、この方向の座標に対する物体の1次元の強度分布を考えると、格子模様が乗る、
平均的バックグラウンドの明るさを
a
、正弦波格子の最大振幅を
m
とすれば、一般的に、物体の強
度分布
O
(x)は

sxmaxO
2cos
1
と表現できる。ここで、1次元における光学系の結像による線像強度分布 LSF
I
(x)と記せば、(1)
式で表わされる被写体の、光学系による等倍結像の強度分布
P
(x)は、(1)式と
I
(x)が畳み込まれる
ことによって(図 1)
 
iii dxxIxxsmaxP
2cos 2
となる。ここで

1
ii dxxI 3
として、正規化すると三角関数の加法定理から

iiii dxxIsxsxmsxsxmaxP }2sin2sin2cos2cos{
 
iiiii dxxIsxsxmdxxIa
2cos2cos

iii dxxIsxsxm
2sin2sin

iii dxxIsxsxma
2cos2cos

iii dxxIsxsxm
2sin2sin (4)
さらに

iii dxxIsxC
2cos
5

iii dxxIsxS
2sin
と置けば、 オイラーの公式より

iii sxisxisx
2sin2cos2exp
6
なので、
C
,
S
I
(
x
i
)のフーリエ変換のそれぞれ実部、虚部である。
(5)式より(4)式は

sx
C
S
sxmCaxP
2sin2cos
C
S
tan と置けば、さらに
 
sin2sincos2cos
cos sxsx
mC
axP

sx
mC
a2cos
cos
sxmCa 2costan1 2

sxSCmaxP 2cos
22 7
ただし
C
S
1
tan
2. 正弦波格子像とコントラスト、そして MTF
上記(7)式より、正弦波格子
O
(x)の像
P
(x)は、やはり正弦波格子であり、その周波数は物体と
同じであるが、振幅が元の 22 SC 倍になり、位置が初期位相項の影響分だけ横に移動し
ている事が分かる(図 2)。
元信号とのピークのずれ量、つまり
P
(x)における原点から位相が0の位置までの距離は、2
sx
=0 より
s
x
2
(8)
となる。明らかに、(5)(6)式から、I(xi)のフーリエ変換を考えれば
 
iiiiiii dxsxisxxIdxisxxI }2sin2cos{2exp
iSC
となり、上式左辺は(3)式においての LSF の正規化を前提としているので、1次元における OTF
定義(連載前回(9)式参照)であり、従ってその絶対値 22 SC はMTFではPTFそ
のである。
像の周期内の最大強度を
I
max、最小強度を
I
min とすれば、結像のコントラスト(contrast)或いは
モデュレーション(Modulation)、Ctは以下の様に定義される(図 3)。
minmax
minmax
II
II
Ct
9
この定義は、以下の如くに、バックグラウンドの平均的明るさと、像強度の振幅の比を表わして
おり


minmaxmin
minmax
2
1
2
1
III
II
Ct
光量の絶対値に左右されず、結像の鮮明さを表わす。図 2 における正弦波物体と像におけるコント
ラストの比を(9)式から計算すると




a
m
SC
a
m
xOC
xPC
t
t22
となり結果は MTF そのものを表す。
3. 参考文献
1) 小瀬輝次:フーリエ結像論(共立出版社、東京、1979)
2) 草川 徹:レンズ設計者のための波面光学(東海大学出版、東京、1976)
3) 牛山善太、草川徹:シミュレーション光学(東海大学出版会、東京、2003)