4. 非対称性収差と PTF
ここまで、簡単に考えるため対称型の PSF を考えたが、一般的な共軸光学系におい
ては PSF・点像強度分布はメリディオナル方向については非対称性を持っている。この非
対称性が大きくなるとき PTF は無視できない大きさの、0もしくはπの整数倍以外の連続
的な値となる。それではどのような時に点像強度分布の対称性が大きく損なわれるのであ
ろうか?それは明らかに 3 次収差論的に表現すれば大きなコマ収差、倍率の色収差など
が存在よる場合が考えられよう。(また PTFは点像強度分布の非対称性、単波長、或いは
色収差が良好に補正されている場合に特にコマ収差の程度を表わす指標と考える事も
出来る。)
この非対称性の顕著さも、対象となる正弦波の周波数により変化する事は当然である。
sより遥かに大きな周波数領域での非対称性(つまり細かい非対称性)では全体での積分
にはあまり寄与しないであろう。相対的に低周波数領域における非対称性が重要なので
ある。したがって相対的に正弦波物体の周波数が高い領域において PTF は顕著な値を
持ちやすい。
PTF の画像への影響はさらに詳しく参考文献4)において触れた。また、本連載におい
ても取り上げさせていただく予定である。
5. 参考文献
1) 小瀬輝次:フーリエ結像論(共立出版社、東京、1979)
2) 草川 徹:レンズ設計者のための波面光学(東海大学出版、東京、1976)
3) 早水良定:光機器の光学(日本オプトメカトロニクス協会,1995)
4) 牛山善太、草川徹:シミュレーション光学(東海大学出版会、東京、2003)