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光学設計ノーツ 30(ver.1.0)
幾何光学的 OTF について
本連載において何回か OTF,MTF について触れさせて頂いてきたが、ここでは幾何
光学的近似の下での OTF についての基本的な内容について触れさせていただこう。その
適用に際しては様々な限界は勿論あるものの、幾何光学的近似による計算の簡便性だ
けでなく、瞳収差の影響を受けない、直ちに光軸に直交する平面上で総ての像高での計
算を出来るなど、計算経済性の面においては非常に優れた面を持っている。現在でも光
学設計において最も重要な総合的評価手法の一つである。
1. スポットダイヤグラム、幾何光学的強度の法則による OTF の計算
幾何光学的にしろ、波動光学的にしろ何れかの手段で像面上の点像強度分布
I
(x,y)
が得られれば(5)式により OTF を計算することができる。ここでは、本書においてここまでに
たびたび取り扱ってきたスポットダイヤグラムを用いて、最も多く光学設計において用いら
れているであろう、所謂幾何光学的 OTF、
OTF
G(
s
,
t
)を算出する方法について考えよう。
ここで光学系の瞳の面積を
A
として、瞳上の単位面積を通過するエネルギーを均一に
1とすれば、光学系を透過する全光量は
A
であり、スポットダイヤグラムより得られる強度分
布(像面単位面積あたりに到達するエネルギー)を
I
p(
x,y
)なる関数で表すとすれば、本連
載24回(9)式より
dydxtysxiyxI
tsOTF pG
2exp,
1
, (1)
である。ここで、瞳上座標(
u
,υ)を導入し、瞳上の微小面積
dS
p
が像面上の微小面積
dS
i
に投影される(瞳面上の面積
dS
p
の微小なパッチを通過した光線が、像面上でやはり微小
な面積
dS
i
のパッチを形成する)とすれば(図 1)、瞳上の単位面積を通過するエネルギーは
1であるので、対応する瞳上と像面におけるパッチの間で幾何光学的な強度の法則3)P15、
pip dSdSI
1 (2)
が成り立つ。