光学設計ノーツ 36 (ver,1.0)
部分的コヒーレント結像の考え方
部分的にコヒーレントな照明領域での照明系の収差の影響
今回も部分的にコヒーレントな照明、結像について考えさせていただきたい。インコヒー
レントな領域での照明形の収差について考えた前回の続きとなり、今回は部分的にコヒーレント
な照明光学系の性質について考えさせていただきたい。
1.照明光学系による部分的コヒーレント照明
図1(前回と同様)にある様に光軸に対して回転対称な系を考える。
本連載前回と同じように半径ρの円盤光源Σの半径ρの像Σが光学系 Lにより得られてい
る。この時、開口絞り面上の点を通過する光線の、入射瞳、射出瞳座標上における対応点を P1
P’1そしてもう一組 P2,P’2とする。本連載前回、(35-19)(35-20)式、像面上のこの照明光学
系による点光源像におけるエアリーディスク半径を r’Aとして)
照明光学系の射出瞳全体がコビーレントな状態、
A
r
13.0
(35-19)
とインコヒーレントな状態、
A
r

13.0
(35-20)
の中間の状態では部分的なコヒーレントの状態となる。像面上のコヒーレンスは複素コヒ
ーレンス度 μ12 により記述されなければならない。前回、(35-20)式が成り立つインコヒー
レントな場合には像面上(照明面上)の複素コヒーレンス度は照明系の収差に依存しないこ
とが分かった。今回はより一般的な部分的コヒーレントな状態においての、この事柄につ
いて検討しよう。
さて、射出瞳から像面上の点 Q’’までの光波の伝播を、Λ1P’1における傾斜係数と
してホイヘンス-フレネル回折の考え方から、

A
Pd
s
ski
PSUQSU 11
1
1
11
exp
,, ()
と表すことが出来るので、本連載 34 回における Hopkins の公式(34-11)式、

dSQSUQSUQQJ 2
*
12112 ,,,
(34-11)
より(1)式は、

dSPdPd
ss
sski
PSUPSUQQJ
SA
21
2
1
21
21
212112
exp
,,,
 ()
従って


A
PdPd
ss
sski
PPJQQJ 21
2
1
21
21
21122112
exp
,, ()
ここで、本連載 32 (32-11)式、
2211
12
12 JJ
J
(32-11)
から


2211
2112
2112
,
,JJ
QQJ
QQ
(3)式より、


A
PdPd
ss
sski
PPJ
JJ 21
2
1
21
21
2112
2211
exp
,
1
また、さらに(32-11)式の関係を利用して
 

A
PdPd
ss
sski
PPPIPI
JJ 21
2
1
21
21
211221
2211
exp
,
1
そしてさらに、本連載前回の(35-12)式、


21
1
2112 exp
2
,
i
v
vJ
PP (35-12)
より、

 

A
PdPd
ss
sski
v
vJ
PIPI
QIQI
QQ 21
2
1
21
21211
21
21
2112
exp2
1
,
()
となる。
ここで、瞳中心から光源像への見込み半角αを用い、光源面上の点 P1P2の像面上におけ
るにおけるこれらの点の共役点 P’1,P’2の間隔 d’として、
sin
2
0
d
n
v (8)
であり、像界の屈折率をnを用いて真空中の中心波長 0
を用いて表記してある。
さてここで、本連載前回考えた Hopkins の公式の以下の形、
   
dSPSUPSU
PIPI
KK
KK
PP
21
21
21
21
2112 ,,
1
,
を考えるとき、この式における入射瞳、射出瞳間の透過関数 K1,K2の位相の変化が(4)式に
おける 21 ,
で表され、これら透過関数の位相項が()式に含まれていることにより、複素
コヒーレンス度が照明系の収差に影響されることが分かる。なお、強度
I
(Q’’1)は、()式に
おいて Q’’2Q’’1に置き換え、μ12(Q’’1,Q’’1)=1なる関係より()式から計算できる。
I
(Q’’2)
についても全く同様である。
2. 参考文献
1) M.Born & E.Wolf : 光学の原理Ⅲ、第 7草川徹訳(東海大学出版会,2005)
2) 小瀬輝次:フーリエ結像論(共立出版社、東京、1979)
3) 牛山善太:波動光学エンジニアリングの基礎(オプトロニクス社、東京、2005)
4)Emil Wolf Introduction to the Theory of Coherence and Polarization of Light
(Cambridge University Press,Cambridge,2007)