コヒーレンスファクターmは対物レンズの NAoにより決まるフラウンホーファー回折
像の大きさと、NAcで決まる原稿上のコヒーレント照明領域(結果的にフラウンホーファ
ー回折像と同形になる)の大きさの比を表していることが理解できる。
対物レンズの解像限界幅に比べ、十分な大きさのコヒーレント照明領域が提供されて
いる時(m→0の場合)、広範囲なコヒーレント領域は NACが0に近づくことにより実現さ
れるのであるが、それはコヒーレント性の強い照明―結像系と考えられる。インコヒーレ
ント領域の目安とされるm=1 の場合には、エアリーディスク半径の 1/4 強程度の幅しかコ
ヒーレント照明領域が存在しないことになる。一般的な投射照明系に用いられる対物(投
影)レンズの場合のように NAOが比較的小さい場合には、原稿面の任意の2点の複素コヒ
ーレンス度はコンデンサーレンズの NACによりひとえに決まるので、非常に大きなmを得
ることも可能であるが、高 NAOの結像系を用いる場合には NACに限界がある為に、m=1
を遥かに超えた、完全にインコヒーレントと看做せる系を得ることは実は難しい。
3. 参考文献
1) M.Born&E.Wolf:光学の原理Ⅲ、第 7 版/草川徹訳(東海大学出版会、東京、2005)
2) 小瀬輝次:フーリエ結像論(共立出版社、東京、1979)
3) 牛山善太:波動光学エンジニアリングの基礎(オプトロニクス社、東京、2005)