光学設計ノーツ 40 (ver,1.0)
部分的コヒーレント結像の考え方 10
部分的コヒーレント光学系の OTF1
前回は部分的にコヒーレントな状態における結像を考える上で重要な transmission
cross-coefficient(TCC)について考えたが、今回からは、TCC から考察される、光学
計には直接重要なものとなる部分的コヒーレント光学系の OTF について触れさせていただ
きたい。今回は OTF 導出のための、TCC の変形について解説させていただく。なお、導出に
ついての座標、光学系配置、変数については前回、前々回におけるものと同じである。換
算座標で書き直した図1をご参照いただきたい。
1. 部分的コヒーレント光学系 OTF の導出、TCC の変形
transmission crosscoefficientTCC)は、本連載前回の(10)式


2121122121 ,,,, DDDD YYXXKyyxxR
2211 ,, DDDDDDDD YYXXASFYYXXASF
22221111 2exp2exp yYYxXXiyYYxXXi DDDDDDDD
2121 DDDD dYdYdXdX 3910
ただし、
22221111 ,, DDDD YXJYXJK 395

21 QIQI
222111 ,:,,: DDDD YXQYXQ
(つまり、原稿面上の 2点の強度の積の平方根である。
において、
21 ,DDDD XXXX
21 DD XX
21 ,DDDD YYYY
21 DD YY
と変数を置き換える。さらに、この計算においては、コヒーレンス度が値を持つのはフラ
ウンホーファー回折像程度の距離はなれた原稿面上の2点についてであるから、実際に
(39-10)式の積分に寄与するのは、像点(XD1YD1XD2YD2)に対応する2物点近傍の
X’D1Y’D1X’D2Y’D2)のみである。従ってその範囲内では照明による強度は一定で
あると看做せよう。(39-10)式の定数を積分外に出し、

2121 ,,, yyxxR

 


ddddyxyxiASFASFK 222112 2exp,,,
1
(39-10)式は変形出来る。
さて、ここで、本連載 33 回における van CitterZernike の定理から、コヒーレン
ス度μから定まる光源面上の強度分布を、瞳上の座標で
s
E
(
x
)と考えれば、コヒーレンス度
は、





dxdyyxs
dxdyyxiyxs
E
E
,
2exp,
,
12
2
と表せる。この様に van CitterZernike の定理からは、光源の強度分布を光源全体の強
度で正規化した値が重要になるので、コヒーレンス度を考える場合には、光源がコンデン
サーレンズ等で結像レンズ入射瞳面上に結像された 2次光源も、本来の光源と同等に扱え
る。この様な強度分布を持つ光源を有効光源effective sourceと呼ぶ。ここで、定数と
して

KdxdyyxsE

,
と置けば(1)式は、
 

,,,,,, 2121 ASFASFyxs
K
K
yyxxR E

dxdyddddyyxxiyxi
2121
2exp2exp
 


ddyyxxiASFyxs
K
KE11
2exp,,
 

dxdyddyyxxiASF

)(2exp, 22 (3)
となる。
さて、点光源がもたらす点像振幅分布 ASF
X
D
,
Y
D
と瞳関数
f
(
x,y
)とは以下のフーリ
エ変換の関係で結ばれているが(参考文献 3P203 7.411式、或いは本連載 28 (12)
式参照)


dxdy
R
yYxX
iyxfCYXASF
2exp,,
4
C
= const.
これを、本連載 38 回以降利用している変数の置き換え、
X
D
=
X
/(
λR
)
Y
D
=
Y
/(
λR
)382
を施して表記すれば、
 

dxdyyYxXiyxfCYXASF DDDD
2exp,, 5
となる。逆フーリエ変換を行うと、
  

DDDDDD dYdXyYxXiYXASF
C
yxf
2exp,
1
,6
さらに原点を移動し、変数を置き換えて表現し、




ddyyxxiASFyyxxfC 1111 2exp,,
(7)
この式を(3)式にそのまま代入すると、
  
dydxyyxxfyyxxfyxs
K
K
CyxyxR E

2211
2
2211 ,,,,,,
8
となり、物体座標、像面座標を含まない(勿論、瞳関数は物体位置に影響を受けるが)
有効光源座標と瞳座標という、双方瞳面上で定義される変数のみで表される TCC について
の簡潔な表現が得られる。
2. 参考文献
1) M.Born&E.Wolf:光学の原理Ⅲ、第 7 版/草川徹訳(東海大学出版会、東京、2005)
2) 小瀬輝次:フーリエ結像論(共立出版社、東京、1979)
3) 牛山善太:波動光学エンジニアリングの基礎(オプトロニクス社、東京、2005)