光学設計ノーツ 43(ver.1.0)
光源の形状と照度の関係、そして NA について
今回は、立体的な形状を持つ光源が、ある距離離れた微小平面にもたらす照度分布に
ついて考えてみよう。実用的に役立つ結果を得ることが出来る。また、そこから結像系の
集光能力を表す開口数、NA についても言及する。
1.任意の形状の光源のもたらす照度
微小光源面積 dS と微小受光面積 dSそしてそれぞれの面の法線と、互いの面中心同士
を結ぶ長さ r の線分との為す角度を、図 1 にあるようにそれぞれ定める。すると、それぞ
れの面中心からそれぞれ向かい会う微小面積に張る立体角は、
2
cos
r
Sd
d
2
cos
r
dS
d
従ってこれらの式から、r2を消して
dSdddS
coscos
となる。図2の様にそれぞれに向かう光線を書き入れると、光源と受光面の役割を入れ替
えても方向は変化するが、光線経路は変化しないことがわかる。
ここで、光源がこの様に輝度 B で一様に光っているとすれば、受光面積 dSに到達する
光束dΦは
dBdSd
cos
(2)式から放射束は一定となり、
dSBdd
cos
微小受光面上の照度dEを考えれば、
dB
Sd
d
Ed
cos (3)
となる。従って微小光源面が連続的に多数存在してそれらがdSを照らす場合にはそれぞれ
の光源面に等微小立体角dΩ‘を張るように光源面全体を細分化して(統合光源面が平面
である必要は無い。(3)式には輝度と、立体角と、そして受光面から光源素を見込む角度し
か現れていないので) 上記受光面上の照度は
dBE
cos (4)
として微小立体角で積分する形で得られる。光源の形状に依存せず、光源を見込む角度と
輝度分布ですべてが決まってしまうことになる。
もし輝度が一様な統合光源であれば
dBE
cos (5)
と、より簡潔な形になる。
もし最大見込み角αの場合の円盤光源面を考えれば、こ
れは、その曲率中心に微小受光面積を持つ、半径 P の球
表面を見込み角αで丸く切り取った光源を考えるのと等
価であるので、 3 にある様に微小角度を設定して、(5)
式を解く。立体角については、小円の半径
sinPq
なので、(1rad は半径1の円周から長さ 1 の円弧を切り出す、中心から張った角度である
から)
2
sin
P
PddP
d
(6)
である。従って(5)式は以下の如くに表せる。


2
00
sincos ddBE
'sincos
2
00


ddB
2
sin2
2
0
B
従って、
2
sinBE
(7)
となり、一様な輝度と、見込み角αにだけ依存することになる。(図 4)
2. NA につい
さて、ここでの見かけ円盤状の光源を光学系の射出瞳とみなせば、そのまま(7)式は像
面上中央の照度を表す。ここで物界の輝度を
B
0と表し、物界、像界の屈折率をそれぞれ
n,n
とすれば、物界と像界の輝度については
0
2
2
B
n
n
B
(8)
の関係があるから 2)(12)式、(7)式は
2
22
0
sin
n
n
BE
(9)
となり、物界における光学系に入力される輝度の関数として像照度が得られる。Numerical
Aperture(NA)、開口数という概念、
sinnNA
10
を用いると(9)式は以下の如くに表せる。
2
2
0NA
n
B
E
11
光源と像の役割を入れ替えた場合には(共役結像関係により可能である)、物界の方にも同
様に開口数
NA
0が考えられる。
2
0
2NA
n
B
E
12
(11)式を(12)式で割れば、
2
0
22
2
0
NA
NA
B
n
n
B
E
E
従って
2
0
2
NA
NA
E
E
13
この場合、物界、像界における放射束φは不変であるから、共役関係にある物体と像の微
小面積を
da、da
とすれば、βを結像の横倍率1)P20 として
2
1
da
adE
E
14
なので、以下の様に物界と像界の NA は横倍率を介して結ばれる。
2
0
2
2
1
NA
NA
15
3.参考文献
1) 松居吉哉:レンズ設計法(共立出版、東京、1972)
2) 牛山善太:光学設計ノーツ第 17 回(オプティカルソリューションズ HP)
http://www.osc-japan.com/service/s05_17
3) 牛山善太:シミュレーション光学(東海大学出版、東京、2003)