2. 完全拡散面の光学シミュレーションにおける考え方
完全拡散面の性質を振り返ってみれば、図 4 にある様に光のエネルギーは法線方向に
対する角度の cosθに比例して落ちていくので、光線の担うエネルギーも光源面法線からの
角度の余弦に比例して少なくなるべきである。
この時の光線とはエネルギーを運ぶ粒子(フォトン)の経路のごときものである。最終的
にこの粒子の個数が計測され明るさが計算される。
この考え方では、被写体が照明光源、或いは平面状のものであれば扱いは比較的シン
プルであるが、極一般的な写真における様な被写体を考える場合には、少々事態はややこ
しくなる。照明光源からの光を受ける2次光源の集合として被写体を考えることになるが、
それ故、原稿面の反射・拡散特性が当然、シミュレーションにおいては重要になる。細か
く被写体の性質ごと、角度ごとに光線の weight、つまりフォトンの持つエネルギーが決定
されなければならない。反射率が高ければ、鏡面的に作用するであろうし、この反射率に
応じて光沢のある面も表現されるわけである。しかし、一般的には、拡散性が高く、完全
拡散面として評価できる被写体の割合も多いであろうとの予測も出来る。その時には、上
述の様に、被写体面素法線と光学系光軸のなす角度θに従って(つまり物体の形状に従っ
て)、光線の weight に cosθが乗じられなければならない。つまり、完全拡散面の均一な照
明下の空間では、被写体の形状に応じて、様々な weight を持つ光線、エネルギーを持つフ
ォトンが存在することになる。完全拡散を前提としても、均一な weight の光線ばかりを想
定してはならない。勿論、鏡面であるとか、光沢のある被写体が存在する場合には、その
面素と一次光源の位置関係等も考慮した細かい光線の角度と関係した weight づけが必要で
あるが、より計算が簡潔であるはずの、また圧倒的に多く存在を仮定されるであろう完全
拡散面の場合にこうした複雑さが発生することになる。
乱数を用いて光線を発生させるモンテカルロ法を用いれば、この場合でも光線の
weight は全て均一に出来る。しかし、光線発生の角度基準軸は面素に直交したものを採用
しなければならないので、いずれにしても煩雑である。