ver.1.0)
幾何光学照度分布計算においての留意点
前回では波面収差と光線収差の関係を表わす式を用いて、光束の集光密度を
計算し、波面収差から像面上の照度分布を求めた。任意の次数の、任意の収差の
存在する場合の照度分布を得ることができ、そこで得られる数式は、スポット・
ダイヤグラムの様な計算機実験的な結果からではなく、幾何光学的強度の法則に
基づく解析的な照度分布を直接表わしていた。しかし同時に、光学系が無収差で
なくとも、開口上の通過座標とともに変化する収差図形の動きが折り返す際に発
生する火線(caustic)等において照度が無限大に発散してしまうなど、本来起
きるはずの無い幾何光学独特の不都合も観察された。今回はこうした幾何光学理
論を背景として実行される照度分布計算、そして OTF 計算などの限界などについ
て考えさせていただきたい。
1. 照度分布図上の発散
前回の解析的な幾何光学的照度分布図、 1 においてはそれそれ照度が無限
大に発散してしまう部分が存在していた。
前回、述べさせていただいた様に、瞳上座標の単調な変化に連れて、像面上
の光線到着点の座標も変化するが、その動きの方向が変わる、く微小なrの変
化に対して、動きが止まる位置においては、無限小の面積に、有限の瞳面積から
の有限なエネルギーを持つ光束が集まり、照度が無限大に発散する計算結果とな
る。勿論、この様な結果は現実には起こらない。光の波としての性質のために、
無限小の面積に有限のエネルギーを持った光束が総て集光する様なことが起こ
り得ないからである。
これらの幾何光学的発散点においては実際にも、高い照度が観察でき、この
様な計算には、そこからシンプルに分布の座標的イメージが得られ、大きな意味
がある。しかしながら、何れにしても幾何光学の理論的な限界は、こうした照度
分布を考える際にも顕著となる。ヘルムホルツの方程式から得られる下記の(1
式において、波長λが限りなく0に近いとして幾何光学的近似を行う。


0gradgrad2grad
0
2
0
2
2
LALA
k
i
k
A
LnA 1
ただしアイコナールを
LzyxL
,,
と表し、 zyx
,, をそれぞれ
x
軸、
y
軸、
z
軸方向の単位ベクトルと
するとき
k
z
L
j
y
L
i
x
L
L
grad
2
2
2
2
2
2
z
L
y
L
x
L
L
である。 また、λoを真の波として、
0
0
2
k
である。
(1)式において、λ0がごく小さい値であると看做せば、k0は非常に大き
2 3 (1)式
2
2
grad nL 2
と、幾何光学的に光線の挙動を示すアイコナール方程式となる。
しかし明暗のはっきりした光と影の部分では、強度が急激に変わるので(1)
式における振幅
A
が場所により大きく変化し、左辺第 3項のgrad
A
が無視でき
ない程の値になる。さらに、前回の場合の様に高密度に光線が集中している場所
においても、(2)式に光線の進行方向を表す単位ベクトル sを導入して得られる、
光線の進行経路を表す式、
Lsn grad
3
の辺々に div をとれば、
LLsn
graddivdiv
となる。左辺は集光点を囲む微小体積の表面を通して集中発散するエネルギー
に比例した量を表している。従って高密度に光線が集中する場所では、上記(1)
式におけるΔ
L
が大きな値となり得、左辺 3 項を無視することが難しくなり、
幾何光学的近似により場を表現できなくなる可能性がある。
スポットダイヤグラムを流用した手法とは異なる、光線追跡によるシミ
ュレーション手法、光束法は光源から射出する微小な立体角内の光束を追跡し、
この光束が像面上に到達する際に生じる光斑の面積から像面照度を計算する手
法で、上述の理論的導出における像面上の面積計算を、波面収差の微分からでは
なく光線追跡によって求めるものである。この幾何光学的強度の法則に忠実なシ
ミュレーション手法においてはやはり上述の場合と同様にして、光斑の面積が
非常に小さくなり、照度の発散が起こり得、この様な像面部分での定量的照度解
析が困難になる。
一方、スポットダイヤグラムの発展型と考えられる粒子法(非常に多くの
光線を発射することにより行われる)においては、照度は像面上に設定された画
素の有限な面積と、そこに到着する有限な光線エネルギーによって計算される。
このことは、エネルギーが、有限な面積を持つ画素ごとに平均化されることを意
味し、又、サンプル数も有限であるので、こうした発散は起こりにくい。
2. 幾何光学的 OTF 計算についての考察
一般的に幾何光学的 OTF 計算として行われる計算と、それに対してモンテカ
ルロ法を用いてチャートの結像シミュレーションを実施しチャート像のコント
ラストから、或いは幾何光学的 PSF シミュレーション結果をフーリエ変換 OTF
計算した場合の結果の相違について検討してみよう。以下での波動光学 OTF
から幾何光学 OTF 式への変換については参考文献1)P113 において論じられて
いる。
参考文献 2P1384.16)式より幾何光学 OTF は、
  

dudvvuytvuxsi
A
tsOTF S
G ,,2exp
1
,
得らS 瞳領域、A 瞳面積を表す
一方、波動光学的 OTF 参考文献 3P179(25),(26)式か瞳の領域を
S
(
u
,
v
)=1
S
(
u
,
v
)=0 瞳領域外
として表す関数
S
()を用いて、
 

vuSRtvRsuS
A
tsOTF ,,
1
,

dudvvuWRtvRsuW
i
,,
2
exp
(6)
と表せる。ここにλは波長、R は瞳中心から強度分布中心までの主光線に沿って
の距離、
u,v
は瞳座標、
s,t
は、それぞれサジタル方向、メリジオナル方向の空
R=10s=100、λ=0.000587 であれば、
587.0Rs
である。
さてここで、6)式の exp の項を考えると
λRS,λRt
が十分に小さい値で
あると看做せれば、

vuWRtvRsuW ,,



Rt
vuWRtvuWRt
Rs
vuWvRsuWRs
,,,,
v
W
Rt
u
W
Rs
従って(6)式は
 

vuSRtvRsuS
A
tsOTF ,,
1
,
dudv
v
W
tR
u
W
sRi
2exp (7)
また、参考文献 2P119(3.16)(3.17)式の波面収差と光線収差を表す関係式から、
像界の屈折率が 1であれば、
u
W
Rx
(8)
v
W
Ry
となるので、(7)式は
 

vuSRtvRsuS
A
tsOTF ,,
1
,
dudvvutyvusxi ,,2exp
(9)
となり、幾何光学的 OTF(5)式とは酷似し、積分領域のみ異なる。もしλ→0
と近似すれば積分内前半の表す積分有効範囲は瞳領域と一致し、(9)式は(5)式と
全く同じになり、幾何光学的(近似)OTF 計算の正当性が示される。すると、
近似で最も肝要となる部分は

Rt
vuWRtvuW
Rs
vuWvRsuW
,,,,
v
W
u
W
置き換え部分で波面上に差分に傾き微分に傾き置き
えられるか否かが、幾 OTF 計算を考え上で第一に重要に成る
λRS,λRt
が波面の構造に対して十分に小さい値と看做せるかどうかという問題である。
従っ波面に間隔に相応な凹凸が存在す場合に大き幾何
光学的 OTF 計算は誤差を含む
屈折率が大き関数に対し小刻み所に変化し場合
面に微小な凹凸が存在す場合な明ら位相差も付随し変化し
面形状も微少な凹凸を持つ従っ場合、波動光学的 OTF 計算を
施す事が妥当で
結像光学系と比べ大き収差を持つ上記の如く留意
必要と光学系が存在す計算に際し動光学的計算は
割、像領域の問題か実用的に非常に計算の負荷が大き光学系
対に照明計算に如く多数の光線を発生さ強度分布を一旦得
結果を変換し MTF 計算す射出瞳座標が一切介在し
算を行う波動計算結果に近接す効果が含ま思わ
参考文献
宮本健郎“光学入門”岩波書店、1995東京)
牛山善太“光学”
牛山善太“波動光学エ基礎”