光学設計ノーツ 49(ver.1.0)
幾何光学照度分布計算においての留意点
前回では波面収差と光線収差の関係を表わす式を用いて、光束の集光密度を
計算し、波面収差から像面上の照度分布を求めた。任意の次数の、任意の収差の
存在する場合の照度分布を得ることができ、そこで得られる数式は、スポット・
ダイヤグラムの様な計算機実験的な結果からではなく、幾何光学的強度の法則に
基づく解析的な照度分布を直接表わしていた。しかし同時に、光学系が無収差で
なくとも、開口上の通過座標とともに変化する収差図形の動きが折り返す際に発
生する火線(caustic)等において照度が無限大に発散してしまうなど、本来起
きるはずの無い幾何光学独特の不都合も観察された。今回はこうした幾何光学理
論を背景として実行される照度分布計算、そして OTF 計算などの限界などについ
て考えさせていただきたい。
1. 照度分布図上の発散
前回の解析的な幾何光学的照度分布図、図 1 においてはそれそれ照度が無限
大に発散してしまう部分が存在していた。
前回、述べさせていただいた様に、瞳上座標の単調な変化に連れて、像面上
の光線到着点の座標も変化するが、その動きの方向が変わる、ごく微小なrの変
化に対して、動きが止まる位置においては、無限小の面積に、有限の瞳面積から
の有限なエネルギーを持つ光束が集まり、照度が無限大に発散する計算結果とな
る。勿論、この様な結果は現実には起こらない。光の波としての性質のために、
無限小の面積に有限のエネルギーを持った光束が総て集光する様なことが起こ
り得ないからである。
これらの幾何光学的発散点においては実際にも、高い照度が観察でき、この
様な計算には、そこからシンプルに分布の座標的イメージが得られ、大きな意味
がある。しかしながら、何れにしても幾何光学の理論的な限界は、こうした照度
分布を考える際にも顕著となる。ヘルムホルツの方程式から得られる下記の(1)
式において、波長λが限りなく0に近いとして幾何光学的近似を行う。
0gradgrad2grad
0
2
0
2
2
LALA
k
i
k
A
LnA (1)
ただしアイコナールを
LzyxL
,,
と表し、 zyx
,, をそれぞれ
x
軸、
y
軸、
z
軸方向の単位ベクトルと
するとき