さて、(5)式に(6)式を代入し、ビームスプリッターなどを用いて記録したときとまった
く同じ参照波、再生光でこのホログラムを照射したとすると、再生波
r
(x,y)に、強度分布を
記録したホログラムによる振幅透過率フィルターが掛かることになり、透過光とフィルタ
ーの積を考えることにより以下の様な光波が発生する。
sinexp,,, 2
1
2
10 ikxRRtyxgttyxryxT
yxiRyxgt ,exp, 2
1
sin2exp,exp, 2
1kxiyxiRyxgt -(7)
(7)式右辺第1項は(3)式の参照波と振幅係数以外は同じ光波を表している。つまり、参照波
と光の進行方向には変化がなく、また、被写体の位相情報は失われているので、ホログラ
フィにおいては大きな意味を持たない。これを0次回折光と呼ぶ。
重要なのは第2項以降である。(1)式から明らかなように、物体波に、参照波の振幅、
転写条件の定数項が掛かっただけで、物体波そのものが再生されている。この光波(+1次
光)は実際に物体からの光波が窓 Hを通過する時と強度比例定数項以外はまったく同じな
ので、上述のホログラフィ行程を経ることにより、物体が存在しなくとも、Hを覗き込む
と、あたかも物体が存在するように再生像(虚像)を観察することが出来る。つまり3次
元像の記録が可能になる。
そして、(7)式3項について考えてみると、この場合も物体波の位相情報は含まれてい
るが、(35)式から分かる様に、
x
方向について 2
kx
sinθで表される位相差が加えられる事
になり、+1 次光と比べ、参照光の2倍の角度分、異なった方向に光波が伝播していること
が理解できる。さらに、オリジナルの位相項φにおけるマイナスの符号について考察すれ
ば、物体面が多数の点光源より形成されていて、物体の一点から H に達する波面は球面波
になっていると考えられるので、物体波を多数の球面波に分解すれば、φの内容をより具
体的に記して
mm
m
mr
krti
uyxg
exp
, -(8)
として表され得る。
r
はこの場合、点光源から観測点までの距離である。よって(7)式3項