ver.1.0)
デジタル画像の性質について
今回は、これまでとがらりとテーマを変えて(本当は繋がっていますが)、
所謂デジタル画像というものの性質について考えさせていただきたい。デジタル
画像とは ccd cmos 等の離散化された画素を持つ撮像素子を用いて、そこか
得られる離散化された情報の塊としての画像を表すものとする。
Digital to Digital 簡単な考察
ここでは最も基本的なものとして、非常に簡単なシステムを考える。Digital
to Digital て、離散化された原稿、被写体を、離散化された像面に結
像させる場合を考える。原稿の画素を 2 個、受光面の画素も 2 個とミニマムの場
合を想定する。ここで、光学系により原稿の画像が結像しているとする。その場
合、レンズによって、ある任意の画素 j から出てレンズを透過する 1 というエネ
ルギーが、像面上のどこかの画素 k にどのくらいのエネルギーとして分散して到
達しているかという分布を
jk
h1
として表す。(この場合必ずしもエネルギーはすべて画素に収まる必要はない。
PSF(point spread function)
point pixel PXSF
pixel spread function)でも呼ぼう(図 1)。
さらに原稿の各画素から射出してレンズを通過するエネルギーを fj、像面各画
素が受け取るエネルギーを gk とする。この場合はj、k ともに、1,2 であるので
121,211,1 gfhfh
(2)
222,212,1 gfhfh
という簡単な連立方程式が成立する。原稿上の発光ネエルギー分布が不明であっ
PXSF が分かっていて、画像の強度分布が分かっていれば、元画像の発光
分布は計算できることになる。具体的に数値を入れて計算してみよう。
PXSF について考えれば、光源画素 1 からのエネルギー1 の光は光学系を介し
て像面画素 1,2 にそれぞれ、0.2、0.3 というエネルギーとして到達し、光源画
2 からはそれぞれ、0.4、0.1 到達しているとする。像面各画素には 4、3 とい
うエネルギーが到達しているとしよう。そうすると、(2)式から、
44.02.0 21
ff
31.03.0 21
ff
と出来る。これを解くのはいとも簡単で、
8
1
f
6
2
f
どなる。
仮に画素が原稿面、受光面とも 4×4 になったとしても(図 2)(2)式は以下
のうに変数、式ともに数が増えて、
141,431,321,211,1 gfhfhfhfh
242,432,322,212,1 gfhfhfhfh
343,433,323,213,1 gfhfhfhfh
444,434,324,214,1 gfhfhfhfh
と、なるだけである。ここでも未知数と式の数は同じなので解ける。これは画素
数が増えて行ってもまったく同じことで、10,000×10,000 画素でも未知数と方程
式の数は同じなので完全に解が得られる。より一般的に表現すれば、
n
nnnn
n
n
nf
f
f
hhh
hhh
hhh
g
g
g
2
1
,,2,1
2,2,22,1
1,1,21,1
2
1
である。因みに光学系の収差がない場合には、
nn f
f
f
g
g
g
2
1
2
1
100
010
001
となる。

T
n
gg
1
g

T
n
ff
1
f
として行列を Aであらわせば、(6式は
Afg
と表せて解は
gAf 1
である。
つまり、光学系の結像性能が得られていれば、その光学系の性能に関わら
ず、既知画像から元画像は、レンズから観察する方向からの見え方については、
digital to digital 画像には本来
含まれている。これは線形代数的には実に当たり前の事実であるが、レンズ設計
的には結構インパクトがある。収差補正はどうでもいいのだ。ただし、以下の特
殊性がこれまでの検討には存在する。
1. 原稿をデジタル化している。一般的にはアナログである。自然を升目に区
切って考えることにより、そこの区分内のすべての無限に近い数存在する
点光源から出てレンズを透過する光の本当の分布と、画素内を均一化して
考えた PXSF との分布誤差が連立方程式を解けなくする。
2. エネルギー量のデジタル化(量子化)は考えていない。上式の画素ごとの
エネルギー等については離散化することの誤差によって連立方程式が解
けなくなる。
大きな問題は以上の 2 つであろう。確かに測定誤差とかノイズの問題、あるいは
計算量については現実的には重要な問題となろうが、遠い未来には解決できるは
ずで、ここでは本質的ではない
上記二つの大問題も、座標、量ともにデジタル化のピッチを細かくしていけ
ば当然軽減できるが、いずれにしても連立方程式のシンプルで厳密な解法には大
きな影響を与える。そこで、必要となるのが、これら大きな意味でのノイズを考
慮して解に接近できるような、最小二乗法的な、あるいは統計的な、誤差を伴っ
た測定値等を扱うための考え方である。
fの値が一応得られているとき、(10式の両辺の差を長さで
表し、fそのものの長さ(このでの長さとは n 次元ベクトルの長さと考えて戴い
て良い)を考えるとき、これらの量の2乗の和、
22 fgAf
はいかなる量を表すであろうか(αは正の定数とする。当然得られた fによ
って第 1 項はなるべく小さい値となることが望まれる。また、その時のノイズを
拾った方程式を解くことによって、fが第 1 項を0と成しても、画像として有り
得ない様な突飛な値をとってしまっても困る。つまり第2項が非常な大きな値に
なっても不味い。言い換えれば、第1項が小さく、2項も小さければかなり尤も
らしい結果が出ているとも考えられる。元画像のコントラスト範囲が大きい時な
どにおいては、かなり適当な感じもするがαの値をいかにとるかによって、
2項の大きさをある程度まで許したりして、コントロールを効かせられるところ
が重要なところである。この様な量を用いて fの落としどころを探ろうと言うの
が最小二乗法の考え方である。
実は上式の値が最小になる解は、Iを単位行列、右肩Tが転置行列を表すと
して、

gAIAAf TT 1
Tikhonov)化と呼ぶ。
参考文献
1)http://en.wikipedia.org/wiki/Tikhonov_regularization