光学設計ノーツ 64 (ver.1.3)
体積ホログラムの回折効率を考える 1
今回から数回分けて、よいよ厚のある体ホログラムの折効率にいて考え
させていただきたい。今回は体積のある媒質内での干渉縞の形成について検討し、そしてそ
こに再生光を照射し、信号光を再生することを考える。
1. 厚いホログラム内の平面波による干渉縞
本連載 61 回とまったく同様にして、物体波ならびに参照波がともに平面波であって、
感光材内の波数ベクトルをそれぞれ、
k
1
k
2
とし、これら二つの波動の合成波は
r
を位置ベ
クトルとして、
(
)
{
}
(
)
{
}
trkiAtrkiAu
ωω
+=
v
v
v
v
2211
expexp 1
と表現できる。従って、これも 61 回と同様に導いて、強度は以下の振幅の絶対値の= 
乗に比例して、
( )
(
)
{
}
(
)
{
}
2
2211
2
expexp, trkiAtrkiAyxu
ωω
+= v
v
v
v
2
(
)
{
}
(
)
{
}
[
]
trkiAtrkiA
ωω
+=
v
v
v
v
2211
expexp
(
)
{
}
(
)
{
}
[
]
+× trkiAtrkiA
ωω
v
v
v
v
2211
expexp
従って、
(
)
(
)
{
}
rkkAAAAyxI
v
v
v
++=
2121
2
2
2
1
cos2,
3
となる。ここで、この干渉縞が媒質内の屈折率の変化により記録されると考える。そしてその屈折
が上式でもたらされる光の強度に比例すると仮定する。(3)式右辺第一項、第二項はそれぞれ参照
光、物体光の単独の強度、バックグラウンドを表すので、これを基本の屈折率
n
0とおけば、屈折率
の分布は、(3)式から以下の如くに表すことができる。
(
)
{
}
rkkAAnrn
v
v
v
r
+=
21210
cos2
4
さらに、
211 AAn
21
kkk
v
v
r
= 5
とおけば、(4)式より、
(
)
{
}
rknnrn
v
r
r
+= cos
10
と出来る。この式がホログラムの屈折率分布を表す。光波の吸収を想定して吸収定数をαと
すると、
(
)
{
}
rkr
v
r
r
+= cos
10
ααα
7
と考えられる。
一般的な表示として、波数は媒質による吸収も考慮した場合、複素数になると考えられ、
λ0を真空中の波長、αを吸収係数として、
α
λ
π
ink +=
0
2
8
と、置ける[5]。ここで、屈折率 n については、
0
λ
λ
=
n
である。
2. 号光再生の検討
本連載第 61 回において、回折光が現れる条件、Bragg の条件について記したが、この
参照光によって回折波が発生している場、回折格子内の波動場
E
は以下の様に表記できる
であろう。
(
)
(
)
(
)
(
)
(
)
rkirArkirArE
r
r
r
r
r
r
r
2211
expexp +=
9
ホログラムは十分に厚いと仮定し、存在するのは
k
1方向に進む再生のための再生波、そし
て右辺第 2 項で表わされる Bragg 条件と整合する回折次数を持った波動(回折波)の二つ
であると考える。
これを以下の様に最大振幅と波数ベクトルを書き換えて表現する。
(
)
(
)
(
)
(
)
(
)
rizSrizRrE
r
r
r
r
r
+
=
σ
ρ
expexp
10
この時,(5)式と同様に、
σρ
r
r
r
=k
11
である。従って回折波の波数は以下の様に表される。
k
r
r
r
=
ρσ
12
さて、話を戻せば、この時、方で均一な誘電体中におけるマクスウェルの方程式から、
各周波数 ω、透磁率 µ、誘電率 ε を用いて本連載 63 回(1)式にある様に、以下のヘル
ムホルツ方程式が導ける。
(
)
0
22
=+ ErE
v
r
v
ωµε
(13)
ここに、
(
)
(
)
rnr
2
0
εε
= (14)
であるので、
(
)
(
)
22
0
2
ωµεωµε
rnr = (15)
であって、
( )
(
)
2
0
2
2
0
2
0
2
c
c
rn
r
ω
µεωµε
= (16)
(
)
2
0
2
0
2
ckr
µεωµε
= (17)
さらに
2
0
01
c
µε
なので、
0
22 =+ EkE
v
v
(18)
と言う式に(13)式は戻る。この式を基に以下、厚いホログラムにおける光波の再生について
考えて行こう。
3. 参考文献
[1] A.Yariv:光エレクトロニクス展開編/多田邦夫、
神谷武志監訳(丸善、東京、2002), p.676.
[2] Kogelnik, Bell Sys.Tech. J., 48, 2909 (1969).
[3] M.Born & E.Wolf :Principles of Optics,6th edition(Pergamon Press, Oxford, 1993)
/草川徹、横田英嗣訳:光学の原理(東海大学出版会,1977).
[4] J.W.Goodman: Introduction to Fourier Optics 2nd.edi. (McGraw-Hill, NewYork, 1996), p.336.
[5] J.W.Goodmanフーリエ光学 / 尾崎義治、朝倉利光 訳(森北出版、東京、2012, p.326.
[6] 辻内順平:ホログラフィー(裳華房、東京、1997), p.56.
[7] P.Hariharan: Optical Holography Principles, techniques and applications, 2nd.edi.
(Cambridge University Press, Cambridge, 1996), p.48.
[8] 辻内順平:光学概論Ⅰ(朝倉書店、東京、1979.
[9] 牛山善太:波動光学エンジニアリングの基礎(オプトロニクス、東京、2005.