光学設計ノーツ 65 (ver.1.2.1)
体積ホログラムの回折効率を考える 2
前回から厚さのある体積ホログラム(thick hologram) の回折効率(diffraction
efficiency)について考えさせて戴いている。今回からは数回に分けて厚さを持つホログラム
を解析する際に有益で、多く用いられる H.Kogelnik、参考文献[1]の結合モード理論
(coupled- mode theory)(或いは結合波理論(coupled-wave theory)について解説させてい
ただきたい。
薄いホログラムの場合と異なり厚いホログラム内では光波の挙動は複雑であり(入射
光は減衰し、射出光は増大することが計算に採り入れられていなくてはならない)、open で
FarField 的な回折計算は上手く適応できない。そこで、Maxwell の電磁方程式に対して適
切に近似を用いる結合モード理論により比較的簡便に回折効率を計算することができ、
Bragg の条件からのホログラム再生のための再生光の角度、あるいは波長の誤差の許容量
も得られる。
また、本連載第 61 回で触れさせていただいた様に、十分に厚いホログラムにおいて
Bragg 条件が成立する場合には、薄い場合と異なり、多くの回折次数の回折波は Bargg 条件
を満たさないため極端に減衰していき無視できるものとなる。従って、Bragg 条件の角度
(或いは波長)に近い参照波が用いられた場合には入力の参照光と出力の信号波のみ考慮
に入れればよい事になる。これも結合モード理論の重要なポイントである。
なお、本項においては参考文献[1]の解説が記されている参考文献[4][5][6][7]も参照さ
せて戴いている。
1. 結合モード理論・吸収率、屈折率変化の近似のための仮定