光学設計ノーツ 69 (ver.1.0)
体積ホログラムの回折効率を考える 6
今回も引き続いて厚さのある体積ホログラム(thick hologram)の回折効率(diffraction
efficiency)を考察すべく、H.Kogelnik参考文献[1]の結合モード理論coupled- mode theory
(或いは結合波理論(coupled-wave theory)について解説させていただきたい。今回は参照
波、信号波を新たな形式で定義しその位相を得るための式を導出する。次回では回折効率の
評価式に達する予定である。
なお、前回同様、参考文献[1]とともに、その解説が丁寧に記されている貴重な邦文で
ある参考文献[6]を参照させて戴いている。
1. Coupled-wave 方程式と参照波、信号波の新たな表現
前回(10.1)(10.2)式、coupled-wave 方程式、
SiRRcR
(68-10.1)

RiSiScS
(68-10.2)
n
K
4
2
を解くために参照波 R,信号波 S を以下の通りに置く。

zrzrzR 2211 expexp
1

zszszS 2211 expexp
2
これら、(1)(2)式により複素空間を表現することができる。ここでの
R
,
S
は、重要な本連載 64 回の
10)式における最大振幅項である。右辺第一項の波は再生波、或いは参照波であり、ホログラム
中で回折と吸収により徐々に減衰し、第二項は再現される物体波を表す。この時、本連載 64
(10)式における様に波動場を表現し、厚いホログラム内ではこれら二つの光波のみしか存在しない
と考えている。


rizSrizRrE
expexp
10
1,
r
2,
s
1,
s
2 は境界条件により独立に決まる定数である。(68-10.1)式に(1),(2)式を代入
すれば、



zrzrzrzrcR2211222111 expexpexpexp
zszsi 2211 expexp
従って、
1, 2 と表わして、

mmmR sirc
(3)
となる。さらに、(68-10.2)式に(1),(2)式を代入すれば、


zszsizszscS2211222111 expexpexpexp
zrzri 2211 expexp
ここでも、
1, 2 と表わして、
mmmS risic
(4)
が得られる。
2. 位相係数を得る
さて、ここで、(3)(4)式の辺々を掛け合わせると、

mmmmSmmR srsicrc 2
であり、
2
icc mSmR (5)
となる。さらに計算して行って、
0
222

icicccc RSRmmSR (6)
この 2 次方程式を根の公式を用いて解けば、
SRS
mc
i
cc
2
1
2
1
22
2
4
2
1
SRSRS cc
i
c
i
cc

(7)
(7)式右辺、根号内を計算し、式の形を変えて、
SRS
mc
i
cc
2
1


2
1
2
2
242
2
1
SRSSRR ccc
i
i
ccc
2
1
2
24
2
1
2
1
SRSSRSRS
mccc
i
ccc
i
cc
(8)
なる式が得られる。
3. 参考文献
[1] Kogelnik, Bell Sys.Tech. J., 48, 2909 (1969).
[2] A.Yariv:光エレクトロニクス展開編/多田邦夫、
神谷武志監訳(丸善、東京、2002, p.676.
[3] M.Born & E.Wolf :Principles of Optics,6th edition(Pergamon Press, Oxford,1993)
/草川徹、横田英嗣訳:光学の原理(東海大学出版会、1977.
[4] J.W.Goodman: Introduction to Fourier Optics 2nd.edi. (McGraw-Hill, NewYork, 1996), p.336.
[5] J.W.Goodmanフーリエ光学 / 尾崎義治、朝倉利光 訳(森北出版、東京、2012, p.326.
[6] 辻内順平:ホログラフィー(裳華房、東京、1997.
[7] P.Hariharan: Optical Holography Principles, techniques and applications,2nd.edi.
(Cambridge University Press, Cambridge, 1996), p.48.
[8] 辻内順平:光学概論Ⅰ(朝倉書店、東京、1979.
[9] 三好旦六:光・電磁波論(培風館、東京、1995.