光学設計ノーツ 70 (ver.1.0)
体積ホログラムの回折効率を考える 7
今回も引き続いて厚さのある体積ホログラム(thick hologram)の回折効率(diffraction
efficiency)について、H.Kogelnik参考文献[1]の結合モード理論coupled- mode theory
(或いは結合波理論(coupled-wave theory)を参照して解説させていただきたい。今回も前
回に続き coupled-wave 方程式を解いて行く。また、ホログラムの回折効率の定義について
も触れさせて戴く。
なお、前回同様、参考文献[1]とともに、その解説が丁寧に記されている貴重な邦文で
ある参考文献[4]を参照させて戴いている。
1. 透過型ホログラムの再生光の複素振幅
z
= 0 でホログラムに入射した光 Rは、体積媒質内の干渉縞が
z
軸方向に進行しホログ
ラムを通過し再生光 S として移行し、透過型ホログラムの場合には
z
=
t
の面から射出する。
従って、
θ
は小さい角度で有り、干渉縞の法線方向を表す
φ
π/2 近い値であれば
(図 1)本連載 68 回より、
cos B
cz
R (68-9.1)
coscos B
K
B
cz
S (68-9.2)
なので、光波は右側に進行し、Cs > 0 であって、
1)0( R 0)0(
S 1
従って前回(1)(2)式、

zrzrzR
2211
expexp
69-1

zszszS
2211
expexp
69-2
より、
1
21
rr
(2A)
0
21
ss
(2B)
となる。
ところで、前回(4)式は、
111 risicS
222 risicS
と書けるので、これら 2 式の辺々を加えて

21212211 rrississcS
従って(2A)(2B)式より、

isscS
2211 (3)
となる。
ここで、
2
1
2
24
2
1
2
1
SRSSRSRS
mccc
i
ccc
i
cc
(69-8)
であって、m=1 2 重根号の正、m=2 は負の場合を表しているので
HG
1
HG
2
と置いて、(3)式に代入すれば

iHsGsHsGscS
2211 (3)
(2B)式より、

iHsscS
21 (3)
Hc
i
ss
S
11

21
1
S
c
i
s (4)
が得られる。ここでの s1,2 の値を(69-2)式に代入すると、
 
 
tt
c
i
tS
S
12
21
expexp
(5)
と言う、ホログラム透過後の光波の複素振幅を表す式が得られる。
2. ホログラムの回折効率
ホログラムの回折効率ηは参照光の強度を
I
0、再現光の強度を
I
1とした時、
0
1
I
I
(6)
で定義される。よって、z 軸方向への効率としては再現光と参照光のベクトル
σ
ρ
の方向
余弦はそれぞれ、
cos:
coscos:
B
KB
z
z
と表わされるので(図-1)、従って再現光の複素振幅を S として(変数右肩の*は複素共役を
表す。
SS
B
KB
cos
coscos
上式右辺分子が負になる場合も想定して
SS
B
K
cos
coscos
(7)
と出来る。ここで、上記の(68-9.1)(68-9.2)式の関係から,
SS
c
c
R
S
(8)
となる。
次回以降では上記(69-8)式を(5)式に代入して再生信号光の透過後の複素振幅を得た
後、回折効率を表す(8)式を利用して、透過型ホログラムの回折効率を求めて行くこととす
る。
3. 参考文献
[1] Kogelnik, Bell Sys.Tech. J., 48, 2909 (1969).
[2] M.Born & E.Wolf :Principles of Optics,6th edition(Pergamon Press,
Oxford,1993)草川徹、横田英嗣訳:光学の原理(東海大学出版会,1977).
[3] J.W.Goodman:フーリエ光学 / 尾崎義治、朝倉利光 訳(森北出版、東京、2012
[4] 辻内順平:ホログラフィー(裳華房、東京、1997)
[5] P.Hariharan:Optical Holography Principles,techniques and applications,2nd.edi. (Cambridge
University Press,Cambridge,1996)
[6] 辻内順平:光学概論Ⅰ(朝倉書店、東京、1979)
[7] 三好旦六:光・電磁波論(培風館、東京、1995)