光学設計ノーツ 78 ver.1.1
平面波の表現につい
前回において平面波合により完全結像のため条件が導けたが、今回はその最
になるところで、3次元空間における平面波そのものについて改めて考えさせて戴きたい。
1. 1次元的平面波
最もシンプルで基本的な波動のひとつが、正弦波である。この正弦波が、z方向に速度vで進行
する場合は、
(
)
(
)
[
]
φ
+
=
vtzkAtzu cos,
(1)
と表わされる。波動の揺れ、変位の最大値 Aを振幅、中括弧内を位相と呼ぶ。また、明らかに正弦
波は周期を持っている。そこで空間的な1周期を波長λ、時間的な周期を周期 T で表わす。
v
T
λ
=(2)
は波数と呼ばれ、波動が単位距離進行する時に変化する位相角度であり、
λ
π
2
=k(3)
と表わされる。φは初期位相の項であり、空間座標zと時間座標tの原点を適当に選べば0にするこ
とができる。また、周波数fを用いれば、
λ
v
T
f== 1(4)
単位時間に変化する位相角度を角周波数ωで表わし、
T
π
ω
2
=(5)
また、
f
ω
2
=
(6)
空中の光速をcとすれば、ここまでのvは任意の媒質中の速度であるとすれば、cとvの比がそ
の媒質の屈折率となり、
v
c
n=(7)
周波数fは不変であるので、
0
λλ
c
n
c
f==
よって、
0
λ
λ
=
n
(8)
となる。
波動の位相が等しい点を連ねた面を等位相面、或いは波面と呼ぶ。(1)式により表わされる波動
はz方向へ進行する1次元的波動であるが、z軸に垂直な平面を等位相面として持つ波は総べ
(1)れるの様呼ぶ一般
直な方向に進行する。
2. 3次元空間における平面波
ここで、2次元、或いは 3次元空間を伝播する平面波の記述について考えよう。図1に示した様
に、x軸とθの角度を為す方向に進行する正弦平面波を考えよう。
新たに波動の進行方向に X軸、波面上に Y軸を持つ新座標系を考えると、初期位相項を0とおい
て、
ω
λ
λ
π
==
T
kv 2
なので、(1)式より、
(
)
(
)
tkXAtYXu
ω
=
cos,,
(9)
この式をx-y旧座標に変換すると、
(
)
(
)
[
]
tyxkAtyxu
ω
θ
θ
+
=
sincoscos,,
(10)
ここで、波数kを考えると、これは新 X軸上で単位距離、波動が進行する時に変動する位相角を表
わすので、方向(波動進行方向、この場合 X軸方向)と量を持ったベクトルと考えることができる。こ
れを波数ベクトルと呼ぶ。
改めて波数ベクトルの絶対値をkと考えて、旧x-y座標上における成分表示をすれば、
x
y
X
Y
θ
平面波の進行方向
図1 2次元的平面波
(
)
(
)
θθ
sin,cos, kkkkk
yx
==
v
(11)
よって、(10)式は、
(
)
(
)
tykxkAtyxu
yx
ω
+
=
cos,,
(12)
この(12)式を3次元空間における波動の表現に拡張することは容易で、図2における場合、
(
)
(
)
tzkykxkAtzyxu
zyx
ω
+
+
=
cos,,,
(13)
この場合、
(
)
(
)
γβα
cos,cos,cos,, kkkkkkk
zyx
==
v
(14)
であまた座標、z置ベ
r
v
考え、波方向波数
ベクトルとの内積は、成分計算をして、
zkykxkrk
zyx
++=
v
v
よって、(13)式は、
(
)
(
)
trkAtru
ω
=
v
v
v
cos,
(15)
と表現することができる。
さらに、(14)式の方向余弦を用いると、(8)式より、
( )
γβα
λ
coscoscos
2
0
zyxnrk ++= v
v
(16)
とすることも可能である。
3. 平面波上の偏光について、偏光の基本的な考え方
場の正弦振動を考えれば、図 2.5(a)(b)にある様に電場の振動は、特定の 1
と呼ぶ。
γ
α
β
k
kx
ky
kz
x
y
z
x
y
図2 3次元的平面波
3(a)
3(b)
る(図 4(a)(b)
z
y
x
x
y
4(a)
4(b)
x-z 面、y-z 面上の正弦波振動する 2成分の電場を以下の様に表現する。
, = 

cos  (17)
z
y
x
, = 

cos  + (18)
i
,
j
はそれぞれ x軸方向、y軸方向への単位ベクトルである。δは二つの波動の相対位相差
を表している。この 2成分が代表する波動はベクトル的に、
+
(19)
と表すことが出来る。
ところで、ここで平面波とは、単波長の光波、波連が無限に続く状態を考えている。し
たがって、その上で様々な偏光状態を想定したとしても、その成分である進行方向に直交し
て振動する2成分に分解して考えれば、それら波動は、一定の周波数を持ち波連は途切れな
いので、平面波は完全な一定の偏光状態にあることになる。
参考文献
) M.Born & E.Wolf :Principles of Optics,7th edition(Pergamon Press,
Oxford,1993)/草川徹訳:光学の原理(東海大学出版会,2005)
) 辻内順平:光学概論Ⅰ(朝倉書店、東京、1979
) 谷田貝豊彦:光とフーリエ変換(朝倉書店、東京、1992)
) E.Hecht:Optics 5th.edi.(Pearson,Harlow,2017),p344
) 牛山善太:波動光学エンジニアリングの基礎(オプトロニクス、東京、2005p.36