光学設計ノーツ 83 ver.1.0
多数の波動による干渉、波動の合成の考え方 3
今回もまた、前回に引続き干渉を考える上で常に重要となる正弦波動の合成
て解説させていただきたい。
1. 波動の複素表示と強度の計算
元々、合成された振幅
u
は正弦波の合成として以下の様に(80 (10))表現できた。
=
cos
sin( +
) +
sin
cos( +
)
(80-10)
ここで
=
cos
= cos (1)
=
sin
= sin (2)
と新たな時間変化に対して一定な、波動を便宜的に考えた。同一の周波数の正弦波を幾つも
考えた場合には、それらが合算された場合に、その結果も正弦波になることについても前回
に解説させていただいている。
= cos sin( +
) + sincos( +
)
(3)
或いは
= sin( +
) + cos( +
)
(4)
(3)式は加法定理を使って再びまとめてみると
= sin( +
+ )
(5)
よって、uの最大振幅は Aであり、最大強度 Iは、
=
2
+
2
= (cos)
2
+ (sin)
2
=
2
(6)
とできる。また、この時の位相εは、以下の関数から求められる(図 1
tan =
sin
cos
=
sin
cos
=
(7)
従って、
||
=
+
=
(8)
とすれば
= +  (9)
= exp!" (10)
という波動の一般的な複素表示が可能になる。
1 位相εの表現
2(4)式の計算結果を示す。A2としている。位相(ωt+ε0)についてはランダム
に値を代入している(図の場合4種類)(5)式からも分かる通り、(ωt+ε0が変化しても、
A
A
cos
ε
A
sin
ε
i
0
ε
正弦波が横にずれるだけである。
2 (4)式における u の計算結果(縦軸)。横軸は度
2. 最大振幅、初期位相の異なる多数の正弦波の合成
本連載、前回において
cos
=
cos(# + $
)
(82-3)
で表される、波長が一定で、最大振幅 Aと初期位相φが異なる波動の合成、
cos(# + $
)
(11)
がやはり正弦波となることを示した。位相の異なる同じ波長の波動が膨大な数、重なり合っ
ても波動が完全に消えてしまう事は無い。図 3には(11)式において、振幅 A0から 1
間に、初期位相φを-180 度から 180 度の間にランダムに発生させた、波動 100000 個の
合成結果が示されている。やはり正弦波となる。
3 (11)式の正弦波の合成結果。縦軸は振幅。横軸は角度。100、000
明らかに大きな振幅を持っているが、ランダムな最大振幅を全て加え、加え合わせた正弦
波の数で割った値が 1になるように正規化すると図 4となる。曲線自体は同じであるが振
幅は非常に小さくなる。個別には-1 から1の間に Am の値を乱数で発生させている。
4 3 の計算において、単独の Am の合計 1 なる様に振幅を正規化したもの。
縦軸の合成された最大振幅の値に注目。
また更に、試行回数を 10,000,000 回に増やすと図 5にある様に、正規化された振幅は更
に小さな値になる。
5 単独の Am の合計が 1 となる様に振幅を正規化し、
更に 10,000,000 合成した結果。
最大振幅、初期位相は乱数で発生させているため、
合成正弦波の位相は図 3 のものとは異なる。
それぞれ、ある定まったエネルギーを持つ実際の波動を合成していく場合と、ある定まっ
た特定のエネルギー内において、無数の波動に分解して、それらの合成として場を考える場
合とでは、異なる考え方、見方が必要となる。
3. 参考文献
) 久保田広:応用光学、1989、岩波書店、東京)
) 牛山善太:波動光学エンジニアリングの基礎(オプトロニクス、東京、2005
) E.Hecht:Optics 5th.edi.(Pearson,Harlow,2017),p291-293