1.一般的な均質媒質における光波の挙動
一般的な光学設計理論等においては、真空中、空気中、あるいはガラスなどの誘電体
が通過する媒質として考えられる。そしてその媒質中において散乱等は生起しないと仮定
される。空気、ガラスの中ではさまざまな物質分子が存在するのにもかかわらずである。
こうした媒質中に存在する特異な微粒子による拡散を考える場合には、まずこうしたバ
ックグラウンドとなる媒質そのものにおける光波の進行について再検討せねばならない。
微小粒子を含む様な、波長オーダーの物質の精密な構造を問題にする場合には、物質構
造は感受率、分極、延いては誘電率εの空間的な分布として表現され得る。本来は物質と
光の関係を計算するためには微視的な世界で、物質を構成する原子核、電子などの運動を
詳細に検討して、物質中でのミクロな領域での電流密度、或いは分極 Pを決定せねばなら
ない。しかし一般的な光学理論が構成されるマクロな世界では、原子レベルと比べ十分に
大きく、しかし波長と比べ十分に細かな適切な領域ごとの平均をとることにより感受率、
或いは分極を物質固有の定数として決めてしまい、そこからマクスウェル方程式の計算を
スタートする。
誘電体の場合のように、原子や電子が強く結びついている場合には、光波の通過によ
り、(つまり電場により)電荷(electoric charge)が勝手に自由に動くことは許されず、
電流は流れず、真の伝導電流、電荷が巨視的に0であっても、光波通過の影響で電荷が微
小にゆすられて、微視的な領域で正負の絶対値の等しい一対の電荷が、微小な距離離れて
電気双極子として存在して、そこに静電ポテンシャルが生じる。こうした電気双極子モー
メントの密度平均が分極 Pであり、媒質の屈折率を決める誘電率とは以下の通り密接な関
係がある。分極とは、誘電体中の負電荷と正電荷の位置が微妙にずれたものが分布した状
態を表している。
一般的な媒質中におけるマクスウェルの方程式は、媒質中の電荷密度をρ、媒質中に生
じる電流密度を jとして、電束密度 D、磁束密度 B、電場の強さ E、磁場の強さ Hにより、
t
B
Erot
(1)
t
D
jHrot
(2)
Ddiv
(3)
0Bdiv
(4)