2. 照明系評価ソフトの分類
照明系評価ソフトには、大きく分けて二つのタイプが存在する。一つは従来
の光学設計ソフトの延長線上にある種類のものである。処理速度は速く、光学的
な評価・解析能力は高く、回折、偏光などにも対応する、波動光学的な取り扱い、
さらにレーザ光学系への対応が可能なソフトも存在する。また、結像光学系を照
明系と共に扱う折りにも連携が良い。しかし、そのために、結像光学系評価にお
けるのと同様に、光軸と言う回転軸が、主に光線追跡においての基準座標となる
システムが用いられ、光学系配置の自由度は犠牲になる。
結像光学系設計ソフトでは、光線追跡に際し、レンズ等の光学要素面上にお
ける光線の交点が計算されるべき順序が定まっている。例えば、光源から射出し
た光線が最初に到達すべき光学系の第一の面は定まっており、この一面を通過、
或いは反射した光線が、次は第2面、第三面とやはり定められた順番に各光学素
子面と関係を持って行く(図2(a))。
この様な光線追跡方法を逐次光線追跡(sequential raytrace)と呼ぶ。フレア
等の迷明を防ぐために、想定される正常な一順路以外からの有害光線に対しての
遮光が前提となる、つまり、まるで光の流れを通す一本の管の様に振る舞う、多
くの一般的な結像光学系に適応する方法である。照明系評価に対応してはいても、
この流儀を守っていて(部分的な例外は設けられてはいても)、そこで用いられ
る光線追跡手法はこの逐次光線追跡の範囲に留まる照明系設計ソフト群が存在
する。
そして、もう一方には、光軸などに囚われない、光学的要素の自由な空間的
配置を許すソフトが数々存在する。ここでは、光線の入射すべき順序などという
不自然なものが定められておらず、入射可能な総べての光学的要素に対して、光
線が到達するか否かの探査が行なわれる非逐次光線追跡(nonsequential
raytrace)が実行される(図2(b))。様々な光学素子を様々な条件で、自由に空間
に配置できる汎用性の高いソフトである。ただし、それだけに入力パラメータ数
も増え、一般の光学系に近いものを入力するときには、前述のタイプと比べ、煩
図2(a) シークエンシャルな光線追跡 図2(b) ノン・シークエンシャルな光線追跡