3. 何を持って明るさを測るのか
これまでの議論は測光単位にもとづいて、照度、或いは輝度が上昇すること
が明るくなること、と考えた。つまりそこでの明るさはそれぞれの単位を測定で
きる測定器で測った明るさと考えても良い。しかし実際には測定器で良い値を得
るために照明系を組む人もいない。必ず、何かを照らそうとか、それを読み取ろ
うとか、明るい光を認識したいとかの具体的な目的がある。これ以上、明るさに
ついて考えるためにはこうした真の目的を熟慮せねばならない。
まず最も一般的な照明系の使い方としては、dS付近に被照明面が存在する
場合である。例えば読み取りたい原稿である。この原稿にどのくらいの光が到達
するのか、照度はどのくらいか、ということは読み取りのための明るさをダイレ
クトに反映する。勿論、前回触れさせていただいたように、その原稿面がどのよ
うな拡散性を持つかによって、その後の照明系としての性能は左右されるが、と
りあえずは、この原稿面の照度が大きく、あるいは所望の分布に近いことが明る
く性能の良い照明系のためには重要である。
それでは輝度の明るさが反映する場合とはどんな場合であろうか?ある方
向に伝わるエネルギーが増える場合である。その方向に目や、CCD カメラなどが
あるとすれば簡単に考えられる。比較的小さな開口部を持つ、それら目や、CCD
カメラに多くのエネルギーが飛び込むためには、そこでは光線の指向性が重要と
なる訳であるから、輝度が大きな値を持つことは肝要と成る。
例えば、目に限ってしまえば、ある方向から見る人間の目に、より多くのエ
ネルギーが到達する場合が、より輝度の高い場合、と考えてよさそうである。
ところが、確かに輝度が増せば明るい像を我々は得られるのであろうが、あ
る光源を、距離が異なる位置から観察すれば、我々の瞳には異なる量のエネルギ
ーが飛び込んでくるはずである。この量は、光源の大きさと、輝度と、距離、そ
して瞳の大きさにより決まり、輝度には変化は無く、この距離のみが変化すると
考えられる。この状態を図示したのが図 Xである。目を瞳面積 Aのレンズと網
膜上の像と言う構成で単純に考えている。Sと言う面積の光源が面積 Qの像とし
て網膜に映っている。系 1においてはレンズを挟んだ界における輝度を B,B’と
して、輝度の定義から
B・S・(A/L2)=B’・Q・(A/P2) (3)
B・(S/L2)=B’・(Q/P2)
と、エネルギーは保存され、倍率関係からレンズから、物体、像までの距離と光源面積、像
面積の間に以下の式が成り立つ。
S : Q=L2 : P2
従って
Q/P2=S/L2 (4)
よって