図5をご覧いただければ一目瞭然であるが、光の集中の傾向は確かに現れていて、かなり
エネルギーの集中の高そうな点も存在はしていても、どこに集まっているか?と考えれば
かなり混沌とした状態になっている。それぞれの光線は全て光軸方向に曲がってはいるが、
その方向はかなりバラバラである。本来はどこかの一つの場所に光が集まることが効率か
らすると理想である。また本来一点から出た光が再びフィルム上で一点に集光しようとす
る程度は写真などの画像の性質を考える上では大変重要に成る。この光線が一点に収束す
ることからのずれを収差と呼ぶ。結局、この収差を低減することがレンズ設計という仕事の
非常に大きな部分を占めている。
従って、こうした作業においては(或いは場合によってはレンズを使用するに際しても)、
この収差というものを定量化しなければならない。具体的には基準座標、基準位置を設けて
光線通過位置の、そこからのずれを知ることが必要になる。その基準位置となるものが理想
像点、というものである。
4.理想的な像点
図5を良く見ていただくと、光軸のそばを通過する光線は、境界面で僅かに屈折した後、
光軸上の殆ど同じあたりを横切っていることが、なんとなく分かる。光軸のそばにどんどん
近くなるように光線を発射させれば、ある位置に、この光軸と光線のクロス点は収束してい
く。これが理想的な像点である。軸に近いところ(近軸領域)の光線で定義されるので近軸
像点と称される。これが収差を計るための基準と成る。
実はこの近軸像点は(1)式を
2211
nn
(2)
として、光線の屈折を計算することによって簡単に定まる。なぜ、このような簡略化が可能
かといえば、sin は
!5!3
sin
53
(3)
と続く多項式に展開できる。右辺の無限の項まで考えてはじめて右辺と左辺が一致するわ
けであるが、θが極小さい場合には右辺第一項で事足りる。つまり
sin (4)
である。従って上記の近軸領域の場合には、(2)式が成立する。
さてこの(2)式で光線の屈折を考えるとどうなるであろうか?