3. 球面収差図
球面収差を表すのに、図 4にある、
球面収差の縦収差図、と言うものがある。縦収差があれば、横収差もあって、横収差は収
差の像のにじみの大きさを直接示す。撮像素子だとかフィルム上の、本来は一点に集まら
ねばならない点光源の像のボケの大きさを言う。これに対し、縦収差とは、球面収差の場
合には特にわかりやすいが、本来光軸上の一点に集まるべき光線が、収差があると、その
焦点以外の場所で光軸をよぎってしまうことになる。この光線と光軸との交点の、光軸上
に沿って測った焦点(フィルム位置)からの距離を縦収差と呼ぶ。像として現れる収差量
を直接表してはいないが、光学系の光の収束具合を大局的に掴むのに適していて、特に日
本とか独逸において特に重宝されていると聞いている。
さて、ここで図 4に戻れば、ある程度意味を掴んでいただけると思う。収差図の横軸
は上記の交点の座標である。縦軸は、光線の光学系からの出所を示せればよいのであるが
(その光線が光学系のどこを通過して来たかを知るため)、一般的には光線の絞り面におけ
る通過位置で示す。
絞りと言うのは必ず光学系の内部に存在し、光線の広がりを制限する役目を果たして
いる。もし、絞りが存在しないように見えても、レンズの枠等が絞りの代役を果たしてい
る。
この、絞りの一番端を通過した光線の交点座標は、グラフの縦軸、一番上のラインに
書き込まれることになる。絞りの位置が中心から 70%の位置であれば、図も縦軸 70%の位
置に書き込まれる。こうしてプロットされたのが図4の球面収差図である。縦収差図を見
ることによって、どんな収差補正が球面収差に対して行われているかが分かり、フィルム、
撮像素子はレンズから見てどの位置に配するのか?絞りを絞った時、どの様な収差状況に
なるのか(絞りを絞ると、収差図の上の方から図がcutされていくことになる)? そ
の様な内容については目瞭然で分かる。
3.参考図書
1) 高野栄一:レンズデザインガイド(写真工業出版社、東京、1993)
2) 小倉敏布:写真レンズの基礎と発展(朝日ソノラマ、東京、1995)
3) 草川 徹:基礎光学(東海大学出版会、東京、1997)
4) 久保田広:応用光学/POD 版(岩波書店、東京、1980)
5) 松居吉哉:レンズ設計法(共立出版、東京、1972)
6) 松居吉哉:結像光学入門(JOEM、東京、1988)