LED 照明ノーツ 2
レンズを使う11
<張り合わせレンズにおける色収差の除去>
前回は色収差を考えるうえで非常に重要な、アッベ(Abbe)数について解説させて戴
いたが、このアッベ数と焦点距離を計算する近軸理論の組み合わせにより、薄いレンズ同
志が密着した場合における、焦点距離の色収差除去のための条件を導くことが出来る。こ
の条件は照明系をも含むすべての、多色の状況における、レンズ系配置の基本を示唆する
ものである。
1.色収差を除去できる条件
前回、触れさせて戴いた通り、d線(587.6nm)を中心として、C 線(656.3)、F 線(486.13)
の焦点距離の色収差を考えれば、
1
d
CF
n
nn
f
f
244
(24-4)式右辺の逆数νdをとり、正の値を考えると
CF
d
dnn
n
1
24-5)
となり、この値を Abbe 数と呼んだ、硝材などの光学媒質の波長に依存した性質を表わす定
数である。さて、(24-5)式を焦点距離の変化の式、(24-3)式、
1
n
n
f
f
24-3)
に代入し計算すると
d
f
f
24-6)
焦点距離も Abbe 数も限られた値の範囲にあるので、薄肉単レンズにおいては、必ず焦点距
離の色収差が存在することが理解できる。
さて、ここで、独立した薄肉レンズを密着させて、薄肉合成系を形成する場合を考え
てみよう。二つの薄肉レンズの焦点距離、Abbe 数をそれぞれ、f’1、f2、ν1、ν2とする
時、合成焦点距離を f’として、
21
111
fff
よって、常にその値が 0 となる、以下の関数を考えることが出来て、

0
111
,,
21
21
fff
fffF
よって、全微分をとって、
0
2
2
1
1
fd
f
F
fd
f
F
fd
f
F
dF
各項の微分を夫々実行して、
0
22
2
2
2
1
1
f
f
f
f
f
f
dF
よって、
2
2
2
2
1
1
2f
f
f
f
f
f
(10)式に(24-6)式を代入すると、
211
2
11
ff
f
f
よって、(11)式より焦点距離の色収差を除去する条件は、
0
11
2211
ff
と得られる。Abbe 数は常に正の値であるから、必然的に一つの unit と見做せる密着系の場
合には(密着しないと異なるので注意を要する。それについては別の回に触れさせて戴く
こととする。)正負、焦点距離が逆になったレンズ同志の密着によってのみ、焦点距離の色
収差が除去し得ることが理解できる。この理論は、薄肉系に近い、凸レンズ、凹レンズを
張り合せたダブレットレンズにより、うまく具現化されている(図 1)。
1 凸レンズと凹レンズによるダブレットレンズ
この時の、それぞれの薄肉系の焦点距離は、(7)(12)式より、
1
21
1
ff
2
21
2
ff
となる。
2. 参考文献
光学技術の基礎講座”(トリケップス、東京、1993)
小倉敏布:写真レンズの基礎と発展(朝日ソノラマ、東京、1995)
3) 高野栄一:レンズデザインガイド(写真工業出版社、東京、1993)
4) 辻内順平:光学概論Ⅰ(朝倉書店、東京、1979)
5) 松居吉哉:結像光学入門(JOEM、東京7)1988)
6) 村田和美:光学(サイエンス社、東京、1979)