d
1 +
d
2 = 一定
である。1,3 群が互いに一つの筒に内包され一緒に動くイメージである。中央の負群は固定
で有る。図 1右端をフィルム等のある像面と考えれば、2群と像面は同じものに固定されて
いて、互いの距離が変化することは無い。1,3群のみを一体で動かして、変倍された像、
つまりレンズ系全体が異なる焦点距離になった場合の像が、はたして固定された像面上に
得られるのだろうか?これが可能であれば、非常に単純な構造でズームレンズが製造でき
ることになる。
さって、結果のみ先にお伝えすると、移動量を近軸計算し探していくと、図の如くに上
手く像面に焦点が一致する移動量△が存在する。3群の場合には3点ある[1]。適当に各群の
焦点距離、初期間隔を決めた、薄肉系の近軸計算結果では
f1=100 f2=-20 、f3=50mm
d1= 70.511 12.16 1.034mm、
d2= 9.489 67.84 77.67mm の時
f= 486.92 33.7 24.38mm
として像面は一致する。これは結構素晴らしい結果である。この時、2群から像面までの距
離は 175mm と一定である。ズーミング時にはその他の点では焦点位置はずれていく。この
計算例でも tele 近傍では 150mm 近く変動してしまうが、36 から 24mm ではそれでも
0.5mm 程度のずれに留まる。Fナンバー5.6 では、錯乱円直径は 0.1mm 程度には収まる。
より適切な設定を検討し、焦点距離の変倍も考えれば用途によれば利用が出来る。こうした
単純な光学系の動きによるズームを光学補正式ズームレンズと呼ぶ。図 1にある光学系の
原型は R.H.R.Cuvillier による PanCinor(パンシノール)(1949)[2]である。他にもいろ
いろな形の光学補正式が存在する[2][3]。実際には画質、ズーム倍率、コンパクト性などの
観点から、カムなどの機構でダイナミックに、且つ精細に焦点を形成し続けていく機械補正
式ズームレンズが主流となって行く。ただ、PanCinor 的な考え方は、本稿で登場する高倍
率ズームレンズの構造を検討する上でも重要であり、また画像処理、AF 機構、様々な駆動
機構の進化した現代では無視できない手法かもしれない。
2. 光学補正式ズームの焦点距離とバックフォーカスの計算