LED 照明ノーツ 33
レンズを使う 20
<機械補正式、2群ズームについて 2
前回から機械補正式ズームとしてもっとも構成のシンプルな 2群構成ズームについて
考えさせて戴いている。今回は前回導出した近軸量から、2群ズームレンズの群の焦点距離
の決め方、ズーム倍率について考える。
1. 2 群の近軸計算配置
前回から、下記の図の場合、
1 2群ズームの近軸理論的構造
前群、後群の焦点距離をそれぞれ f1f2、その間隔をdとして、この時 f1
m
倍の値が全
体のこのズームレンズの焦点距離として、
負の群
f
1
正の群
f
2
f
1m
f
1
d
L
a
b
m
m
fa
1
232-6

2
1fmb 32-10
と計算出来た。
結局、後群単独での結像横倍率を
m
2とすれば、

m
m
f
fm
a
b
m
1
1
2
2
2
m1
となり、
は後群の結像倍率であることが分かる。つまり、全形の焦点距離は前群の焦点
距離に後群の倍率を乗じたものと成る。実は 2 群ズームレンズだけに置いてではなく、総て
の多群構造のレンズの場合、同様の結果が得られる。総て空気中で考えて、ヘルムホルツラ
グランジュの不変量より[1][2] 2 にある様に、1 群により形成される像の大きさを
y
2
(2
群への入力値として)その 2 群による像の大きさを
y’
2 1 群により屈折された軸上光線
の角度を
u
2、2 群の結像倍率を
2、2 群による屈折後の同光線の角度を
u
2 とするとき、
図2 後群の変倍機能
Y’1=Y2
Y’2
u’2
u’1=u2
1 2
2222 uyuy
(2)
2
2
2
1u
m
u
同様にその後の群についても、
3
3
3
1u
m
u
k番目の群においては、
k
k
ku
m
u1
従って、全系について考えると
2
32
1u
mmm
u
k
k
(4)
従って全体の焦点距離を
f
として、
2
32
1
u
mmm
u
fk
k
(5)
である。ここで、
1
22
11 f
uu
(6)
であるから、(5)式は
k
mmmff
321
(7)
と表現出来る。シンプルな表現で光学系の構造を表す、重要な式である。ここから、ズーム
レンズと言うものが、各群の結像倍率を(位置関係を変えることにより)変化させて、像を
継承し、第一群の焦点距離を変倍して成立しているものであることが分かる。ズーム比もこ
れら結像倍率の積の比のみにより決まる。
さて、話を 2 群ズームレンズに戻すと、f1 を負として全体で正の焦点距離を得るため、
m も負として、さらにズーミングにより全体の焦点距離が f1(wide 時)から f1mt(tele
時)まで変化すると考えれば、wide、tele の時の図 1 に置ける a の差△を考えると、
t
t
w
wm
m
f
m
m
f
11
22 (8)
tw mm
f11
2
当然、
wt mm (9)
なので、
0
また、f2 は正であって、
t
t
w
wm
m
f
m
m
f11
22
なので、倍率 mtの時に前群と後群が最も接近することが分かる。この最少間隔は機構的に
このズームレンズを成立させるためには非常に重要な数字と成る。ここで、wide tele
焦点距離の比、
w
t
w
tm
m
mf
mf
1
1
(10)
はズーム比を表す。
3はこの 2群形式を見事に現実化した例である[4]。当時としては高屈折率の硝材を
用いて、前方のレンズの屈折力を上げ、小径化を成し、前群、後群のレンズ配分にも考慮が
伺える。また当時急速に進歩していたコンピュータの演算能力を有効に活用した成果とも
いえる。
さらに、ズーミングのために複雑な動きを安定して実現させ得る、そして勿論、製造可
能な鏡筒・機構部分の設計にも多大な努力が払われたことと推察される。
3 2群ズームの例 Canon 35-70mmF2.8-3.51972)上図が wide 時。
7. 参考文献
[1]松居吉哉:レンズ設計法(共立出版、東京、1972)
[2]中川治平:レンズ設計工学(東海大学出版会、東京、1986)
[3]中川治平:“ズームレンズ近軸パワー設計の実際”
光学設計入門テキスト(JOEM、東京、2004
[4]田島晃:“レンズ設計原論”、光学設計入門テキスト(JOEM、東京、2009