LED 照明ノーツ 38
レンズを使う 25
<フレネルレンズについて>
今回は少し話しの方向を変えてフレネルレンズFresnel Lensを取り上げさせて戴
きたい。フレネルレンズと言うものは照明系に主に使われるものであるが、結像光学系とし
ての役割も果たせる。光学レンズとしては変わり種ではあるが、ごく一般的に設計され、
量に製造されているものでもある。
1. フレネルレンズとは
例えば投光照明系等において、非常に明るい Fナンバーのレンズを用い、効率を上げ
たい際には、灯台における様な大規模な装置においては、図 1にある様な、
1 コロコロとした形状の大口径比レンズ
コロコロとした形状の単レンズが検討の対象となる。多くの枚数のレンズを使用してパワ
ーを分担することが、大きさ、重量の問題からは困難なのである。ところが、 1のレンズ
は例えば直径が 1mもあれば、重量も相当なものになるし、製造にも困難が伴い、実用化の
ためには工夫が必要になる。そこで、図2にある様にレンズを同心円状に cut して考えてみ
る。
2 大口径比レンズを分割する
そして、図 3 にある様に、さらに曲面の先端の部分のみきりだして考えてみる。
3 大口径比単レンズをさらに分割する
レンズの球面の部分が屈折に影響すると考え、その部分だけきりだして、円柱の部分を除い
てしまい、さらに球表面の部分を断面図上では直線と近似してしまえば(実際には円錐側面。
図では最周辺と中央部は球面になっている。)図 4 の様な形状が得られる。
4 フレネルレンズの完成
このレンズには図 1 のレンズの持つ基本的な屈折力に同等なものは存在しているはず
である。勿論斜めに入ってくる光束にうまく対応できない(ギャップの位置に光りが来てし
まうと)などの欠点は持ち合わせているが、照明系用等としては、コスト的な面も含め、
1 と比べて非常に合理的な構造になる。
2.フレネルレンズの像位置と頂角の関係
ここで、 5 にある様に、図4のフレネルレンズを前後逆に配置して、そのひと山による
(一つのゾーンによる)光線の屈折について定式化してみよう1)
レンズの媒質の屈折率は
nとし、諸量は図 5 にある通りで、Y は光線の入射の高さである。物体側の面は光軸に直交
する平面と言うことになる。メリディオナル断面内ではプリズムの屈折と同じになる。
5 フレネルレンズを通過する光線
図から
22
'Ia
'aI
また、
bI'
bI
'
となる。ここで
InI sinsin
の関係があるので(1)(2)式を代入して、加法定理から
ananbb
sincoscossinsincoscossin
(4)
Y
a b
a
a' I
I’
φ
A B
(4)式の辺々を cosφで割って、
ananbb
sincostansincostan
bananb sinsincostancostan
ban
ban
coscos
sinsin
tan
ここで、
aan sinsin
なので、
ban
ba
coscos
sinsin
tan
と出来る。一般的に Y に比べて距離 A,B は大きな値なので、
YbBaA
tantan (6)
と出来て、光源位置 A、像位置 B、そして入射高さ Y が決められれば、各ゾーンの頂角φが
求められることになる。実際には一つのゾーンには幅があるのでそこで、Y も変化する。
って、ゾーン内の光線で像位置も微妙に異なることになり、あまり(6)式の近似を心配し
てもこのままでは意味がない。
3. 参考文献
[1]R.Kingslake:Optical System Design(Academic Press、New York、1983),p.38
[2]中川治平:レンズ設計工学(東海大学出版会、東京、1986),p.190