LED 照明ノーツ 42 ver.1.01
レンズ、ミラーなどの曲面の表示方 2
<回転対称非球面>
引き続き今回もレンズ、或いはミラー等における、光軸に対して回転対称性のある曲
(最も一般的なのが球面)の光学設計や、製造に際しての汎用的な表示方法について解説
せていただく。前回では球面、放物面、楕円面、双曲面について考えたがここではさら
複雑な形状の回転対称面について触れる。
. 高次回転対称2次曲面
本連載 40 回の通り、光軸を
軸として、原点に接し、光軸を回転対称軸とし
た回転対称 2次曲面を、曲率半径
r
を用いて、
40-7
40-7)式は、面頂点を原点とした座標系において、光軸からの距離、
40-8
において曲面表面上に存在する点の原点からのずれ量の光軸方向成分を表わし
ている。(1)
+
+
+
=
2
22
22
11
r
zy
r
zy
x
ε
22 zyH +=
1 レンズ、ミラー面を表現する座標系
(光軸)についての回転対称な光学系の光軸を含む断面図。
軸は
x,y
に直交している
40-7)式におけるεは円錐係数(conic term)と呼ばれ、内容については
前回、前々回ですでに触れた。これらの式が回転対称高次非球面を表現する場
合の基本部となり、円錐曲面式とも呼ばれる1)この式に、より高次の図 1
おける
x
の量のズレ量を加えて、より複雑な形状を表すことになる。(40-8
式を考慮した表現をして、一般的には以下の如くに表される1)
x =
󰇧
󰇨+++++ (1)
Aで表される各高次非球面係数により具体的な面形状が表現されて行くわけで
あるが、勿論、Aが全て 0の場合には、(40-7)式の円錐曲面となる。どんど
ん高次の項を付加していくことが可能である。(1)式は(40-8)式の通り
yzのプラスマイナスの符号の違いに影響されないので
x
軸について回転対称
である。
ここで、実際に1式を用いて、実際の面形状を計算してみよう。まず、
準としてε=1の球面の場合を計算してみると、前回図 2と同じ条件で以下の
通りである。
2 球面
前回同様、有効直径 10.02mm、曲率半径 5.0mm で計算している。グラフ軸
の単位は mm である。ここで、この球面に A21としてこの項のみに値を入れ
て計算してみよう。
3 球面+A2(=1)項
かなり放物面に近い形であるが、仮に1)式において、A2=0 として、
rに非常に大きな値を入れると図 4にある様に面は平面となる(図 4)。
4 r=∞、A2=0 平面
この時、A2=1 としてやれば
5 r=∞、A2=1 放物面
5になる。(1)式で考えれば
は∞であるから右辺第 1項は消えて、
x = (2)
となり、まさに放物面である。
が有限の値であっても、この球面のサグ値x
に(2式の放物面のサグ値が足されたものが、
となる(図 3)。
それではここで、A2=0,A4=1 として図 4の平面にそれらの項を加えてみたら
如何であろうか?H4 項の効能が分かる(図 6)。
6 r=∞A2=0A4=1
4乗の項であるから当然、急激にその値を増していく。さらにA6,A8
単独の効能を図示した(図 7)。
7 r=∞、A2=0A4=0A6=1(青実践)、 A6=0A81(赤点線)
更に急激に
の値は上昇していくが、このスケールでは分かりにくい。図 8
A4 から A10 までそれぞれ単独に 0.01 とした図を示す。
8 x=5における H値が大きな順番で上か
A4,A6,A8,A10、それぞれ 0.01 の場合
Hの低い所から(光軸に近いところから)、高次の係数は効いている。これ
らの動きは、係数にマイナスを付ければ、x=0軸を対称軸として全く、逆に作
用するので、仮にどれかの高次の係数をマイナスにすれば、図 9様な複雑な
面形状が表れる。
9 r=∞(平面)、A40.1,A8-0.0005
2. 参考文献
) 草川 徹:レンズ光学(東海大学出版、東京、1988,p94