LED 照明ノーツ 8
表面の粗さについての考え方
今回は、本連載中の BSDF についての回でも触れた 3)折・拡散・散
乱(BSDF はこれらの現象を定量的に表現するためのものであるがの原因とな
る物質表面の粗さについて考えてみよう。ここでは表面荒さについての最もシン
プルな表現方法について解説させていただきたい。
1. 正弦波状表面における散乱
この回では、非常に滑らかでクリーンな正弦波状の鏡面による散乱を考えよ
う。これは言わば一つの回折であって、これから、一般的な表面粗さを考える上
で、それらを様々な周波数の正弦波の合成による表面形状と見なすことにより、
散乱光からその面形状を、定量的に認識することが出来、たいへん重要になる考
え方である。
さて、本稿で扱う“滑らか”と言う言葉は、表面の高低の差が波長よりも
さいことを意味する。そして、クリーンで鏡面と言う言葉は、散乱が表面の形状
(地形)により生ずる回折に支配されていて表面、或はその直下に含まれる異
物質により生起される現象でないことを表わす。
-1 における配置を考えよう。表面上の正弦波は、x軸方向にのみ変化する、
xfaz 1
sin
-(1)
なる関数と表せて、x-z 平面上に入射光 Pi が存在するので、総べての回折次数
項は x-z 平面内に存在することになる。P0光は整反射光である。ここで、fを正
弦波の周波数(つまり回折格子の場合は格子間隔
p
の逆数になる。)、そして、
入射角を、回折角をnとすれば、ここでは詳細は省くが、nを整数として、
nf
in
sinsin -(2)
の次数、角度に対して強度を示す。
n次方向へのエネルギーPnを求めるのに際しては回折理論が適用されるが、
スカラー理論からベクトル理論まで精度、回折格子の複雑性にあわせた種々の解
法が存在する。
因みに有力なベクトル理論では Rayleigh-Rice vector perturbation
theory があるがここでは詳細を割愛して、完全導体表面上で反射強度が一定の
ときの、偏光直交2成分における正弦波面上の1次回折光式を示すに留める。
S偏光: 1
2
1coscos
2
i
i
a
P
P -(3)
p偏
si
i
i
a
P
P
coscos
sinsin1
22
1
2
1
-(4)
ここで、例えば S偏光における回折角を及び PiP1が測定済みであれば、
つまり散乱光の測定により(2)式から、
i
fsinsin 1
-(5)
として、また、(3)式から、
2
1
1
1
coscos2
ii
P
P
a
-(6)
として、初期位相項δ以外の、表面形状についての重要な情報を得ることが出来
る。
2. 粗さの表示
1次元的な表面の形状を表わす関数を
xz とすれば、区間 Lにおけ
る、平均値、或は期待値は、

2
2
1
lim L
L
Ldxxz
L
z -(7)
となる。もし、z(x)=

xz であれば、この面は完全に滑らかな面として考える事
が出来る。そこで、粗さを、形状の平均値からのズレの平均値、分散で表現する
ことを試みると、

2
2
1
lim L
L
L
adxzxz
L
-(8)
この粗さの定義は、面形状測定から結果が直接えられる
rms(root mean square)粗がある。この
rms 粗さは、述べさせていただく機会があると思うが、散乱光の測定から直接得
られると言う大変有益な性質を持っている。は以下の様に表わされる。

2
1
2
2
2
1
lim
L
L
Ldxzxz
L
-(9)
ここで、参考までに1次元的な正弦波形状の表面の rms 粗さを計算してみよ
う。正弦波の平均値、そして周期性を鑑みれば、振幅を a として(9)式

2
1
0
22 sin
1
dxxa
ここで、

xdx
n
n
n
xx
xdx n
n
n2
1
sin
1cossin
sin -(10)
なので、
2
1
0
02 sin
2
1
2
cossin1
xdx
xx
a
2
1
0
2
2
1
2
cossin1
x
xx
a
2
1
0
2
2
11
xa
2
1
2
2
a
2
a
-(11)
となる。
(11)式結果を導出した過程を考えると、rms
粗さにおいては振幅の係数のみ残り図-2 に表わすような二つの粗さの違いを表
現できない。
Surface slope)る概念が導入される。傾きの平均
z
を、
L
Ldx
dx
dz
L
z
0
1
lim -(12)
として、算術平均的面傾きは、
L
L
adxz
dx
dz
L
m
0
1
lim -(13)
rms
m
は、
2
1
0
2
1
lim
L
Ldxz
dx
dz
L
m -(14)
と表わされる。ここで、やはり1次元的正弦波についての rms 面傾きについて考
えれば、今度は正弦波の周波数fについても注目しなければならないから、
fxaxz
2sin
-(15)
と置いて(14)式は、


2
1
2
1
0
2
2sin2
fdxfxafm

2
1
2
1
0
2
2cos22
fdxfxfaf

2
1
2
1
0
2223 2cos8
fdxfxaf
-(16)
(10)式場合と同じ様に、

xdx
n
n
n
xx
xdx n
n
n2
1
cos
1cossin
cos -(17)
(16)式
 
2
1
2
1
0
0223 22cos
2
1
2
2sin2cos
2
1
8
f
fxdfx
fxfx
f
afm

2
1
2
1
0
223
2
2sin2cos
2
1
8
f
fx
fxfx
f
af
2
1
223
4
1
8
f
af
fa
2 -(18)
となる。(18)式を a について解き、(11)式代入すれば、
f
m
2
-(19)
よって波長を(19)式ら以下の関係が導ける。
m
2
-(20)
参考文献
1) J.C.Stover:Optical Scattering(SPIE Press,Bellingham,1995)
2) E.F.Church & P.Z.Takacs:SCATTERING THEORY,HAND BOOK OF
OPTICS (McGraw-Hill,New York,1995)
3) 牛山善太:LED 照明ノ 4 回( HP
http://www.osc-japan.com/sites/all/themes/osc/images/ODN_LED_4.pdf